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lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

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lost/bombs 89

少女の背後で尻尾のようにうねる髪。この街に来てからポニーテールの遭遇率が高いな、とか変な感想を浮かべつつ雄太は呼吸を整える。
「んなもんに興味はねぇ。結局の処、何にでも無限の価値ってのが存在する。ちゃっちな玩具を数十万出されても渡せねぇ奴もいれば、その日にゴミとして捨てちまう奴もいる。価値は相対的で、それは無に近い。だから、あたしは、キャラなんて他人の視線から捕らえられた、あたしという存在に興味はねぇ!」
少女の身体から立ち昇る気をなんと表現すればいいだろう。鍛えられた達人の気のようでもあり、野生動物が滾らせる獣気にも似ている、だが強靭だ。
「あたしはシンプルだ」
「シンプルが強いのなら単細胞のミドリムシは最強だな」
虎の少女の宣言を雄太は失笑しながら侮辱する。しかし彼女は怒らない。己という存在をあざ笑う程度しかできない相手の言葉など蛾の羽ばたきによって生まれる微風程度にしかならないと。
「んじゃやりますか」
ぐるり、と腕を回す虎の少女。雄太は尋ねた。
「名前は?」
「壱虎(ワンフー)。なんで名前を聞くんだ?」
「なんとなく」
「まぁ、物語的には自己紹介は必要だったかもな」
虎の少女―壱虎の全身から滾る気が収束する。戦闘態勢に入ったのだと誰もが気付く。
二人の間で圧力が増す。雄太が拳を構えながら宣言する。彼女と同じく自分の意志を示すように。
「どんな信念があるか知らないが、俺はお前を殺す気はない」
「・・・・別にそれはいいけどよ。そんなんであの化物が倒せるとは思えねえよ。甘すぎだぜ」

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