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lost/bombs
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lost/bombs 87

辰の指先が血によって空中に流麗な文字を描く。
飛び散った血の濁流が渦巻き、二人の周囲を囲む。そして血は複雑な文字となって淡き輝く。
≪万魔神伏血水陣≫
深海五万メートル以上の超水圧が二人を襲う。あらゆる物質を圧壊させる攻撃の前に生存を許される生物は存在しない。白銀の八翼が広がるが圧壊はとめられない。
「くっ、猫。早くしろ」
「悪いな。信念の違いみたいだ」
ウーラノスの雷光が更なる収束を初め、黄金の槍を形成する。その切っ先は龍の王へと狙いをつけ、猫の黄金の瞳は細く口元には三日月の笑みが浮かぶ。
「穿て」
雷光の槍が大気を切り裂く。轟音と閃光の後に、その切っ先は辰の法衣を貫き、心臓を抉っていた。


重力砲≪式輪弾≫と山羊の≪断ち切る力≫の激突によって辺りに蜃気楼のように浮かぶ様々な都市の高層建築物の幻影が震える。おそらく本来の世界では謎の地震が都市を襲っているのだろう。二人に余波が押し寄せ、肉や骨に亀裂が走る。全身から血を零しながら巨躯のままに落下し、大きな土煙をあげるメロ。その側でボロボロの銀翼の槍を杖がわりに立ち上がる刹那は、吐血を始めた。
「くっ、さすがに世界断裂の余波は辛いな」
重力結界によって空間律を歪められ、更にそこに物質無機物、更には空間すらも断ち切る力が注ぎ込まれたことで、ここは世界の位相が歪み、高位次元の力が溢れ出た。
「いや、あふれ出たと言うのはおかしいな。それが圧倒的な力だというのはこっち側の認識だ。もしかしたら、ムコウ側からすれば、ただの空気かもしれない」
刹那はそう呟いた後、クッと口元を押さえて笑った。
それは十三歳の―――思春期真っ最中の少年に似合った、勝気で獰猛で夢と無謀に溢れた子供の笑み。血塗れのまま背中の銀翼を両手に絡み合わせ、銀のドリルを作り出し構える。
「すっげぇえええええよな」
少年は吼えた。
「僕――いや、俺は我慢できねぇよ。目の前にすっげぇ世界があるってのによぉ。こんなチャチィものに手足を縛れて生きるなんて我慢どころか、耐え切れるか。邪魔するなら叩き潰す。目の前に壁として存在するならぶち壊す」
「・・・・・・子供の空想だ」

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