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lost/bombs
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lost/bombs 85

雄太は拳をその背中へと叩き込んだ。
体重差、筋力差、それらは雄太が上、しかし腕の筋肉が靠撃の威力に波のようにうねり、そして吹き飛ばされる。咄嗟に右の拳を離さなければ左腕をへし折られる威力だった。
「すごいな」
純粋な驚きと尊敬に紅兎が頬を掻いて苦笑する。
「なんかいまいちノれない流れっすね。もっと能力とか技術とか怒りとか憎悪とか、ぶつけてきて欲しいっす」
「殺し合いをする気は無い。その技法は学びたい」
「盗むつもりっすか」
「ああ」
雄太の豪速の回し蹴りが放たれる。まともに当たれば相手の血肉を引き千切る一撃を彼女は右手で受け、そし流す。手応えはまるで綿のようで、彼女は腰を落として拳を構える。紅兎の唇が震え、彼女の前に衝撃波の盾が展開される。直撃攻撃の状態なのに防御、という奇妙な状況に戸惑いつつ足を戻し、隻腕を構えた所で拳が放たれる。
拳の先端が衝撃波を貫き、そして衝撃は螺旋を描いて腕を包み込む。まるでドリルのように回転する矛先を手に入れた拳に危機感を抱いて逃げる。
その一撃を受けて大地が抉れた。
恐ろしいまでの一撃。まるで捻じ切られたような跡と穴に雄太は吹けたなら口笛を吹いたに違いない。ただ今まで口笛を吹いたことが無い彼はただ愚直に紅兎へと飛び掛り、地面に足を叩きつける。
震脚。中国拳法にある地面の力、地脈から伝わる力を自らに引き込む一歩。身体を捻りながら相手にぶちかます。
「ぐるおおおおおおおおおおおおっ!!!」
喉が裂けんばかりの一撃を相手に叩き込む。
拳でも肘でもなく全身の力が乗る背中、初めての武器の距離の使い方に間違えたなら更に一歩。踏み込むごとに地面に足跡を穿ちながら相手に攻撃を打ち込む続ける。
衝撃波の盾を、一撃ごとに粉砕しながら進む雄太の姿は、まるで停める事が無い瀑布のよう。紅兎が衝撃波の盾では防げないと覚悟を決め、両手を重ねる。
化剄によって攻撃を逸らすと決めた紅兎と、愚直で強力な靠撃がぶつかる。

時を同じくして天と空と地で爆発が弾けた。

それを彼女は見ていた。闇黒のような髪を靡かせ、混沌のように揺らぐ瞳で、この世の全ての赤を集めたような唇には微笑も苦笑も浮かべず、ただ淡々と見ていた。
「生と死がどちらが強いかなど誰もわからない」
唇から漏れるのは空虚。何も無いゆえに何もかもを許容する空っぽ。
「戯言で出来た、この世界ならばなお更、砂の上に作られた砂の城など朽ち果てるのは必須だと思う」

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