PiPi's World 投稿小説

lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

の最初へ
 77
 79
の最後へ

lost/bombs 79

刹那は地面に背中を押し付けるようにして翼の槍を空へと向けた。上空から降り注ぐ魔刃を銃撃で辛うじて防ぎながら羽の一枚がサイトのように刹那の片目を包み込む。
「人造魔弾最硬―――≪式輪弾≫」
槍の中心に刻まれた銃弾が回転を開始、それと同時に重力の変異動式が刻まれていく。それはプログラムであるが魔方陣のようでもあった。プログラムに刻まれているのは重力の軽減ではなく倍化。上空に向けて通常の重力指数1を超えるマイナス六百六十六という、とんでもない半重力を発生させる。
それだけの半重力は辺りの地形を変化させ、人間の生体組織を崩壊させる。元来人間は重力という圧力に対して非常に耐久性が無い。重力3以上の場所に五分以上いるだけで生体器官に異常が起こるからだ。六百六十六という異常な数値の中で耐えているのは刹那の体が人間と機械との融合体であるためだ。それでも一分もいれば彼の身体は崩壊を始めるだろう。
「設定≪スナイプ≫」
左目を覆った羽が複雑な収束眼帯となって上空にいる巨躯の山羊を睨みつける。山羊の双角が爛々と凄まじい力を宿しているのを見ながら刹那は引き金を引く。
「さようなら」
槍の切っ先から銃弾が飛ぶ。半重力を吸収し銃弾は金属ではなく漆黒の重力弾となって巨躯の山羊へと襲いかかる。山羊は双角から放たれる『断ち切る力』を解放し、力は虚空で激突した。




猫は笑う。嘲笑を浮かべて愉悦と夢と、そして生きる為に戦う者達を見て笑う。人が蟻を飼って遊ぶように彼女は嘲笑う。銀髪が揺れ、猫琥珀の瞳が細まる。
その彼女に声がかかった。
「楽しいかい?」
「・・・・・別に」
「君は嘘をつくのが下手だな。そりゃ嘘をつく必要がないかもしれないが、相手の気持ちを推し量って・・・いや、そういうこと事態が必要ないのか。天上天下唯我独尊、独覚」
「相変わらずお前は喋るのが長い」
猫の少女が振り返る。
「武王の新型が何用だ。何かの報告でもあるのか?」
そこにいたのは足元どころか、身長の倍以上もある長い銀髪を靡かせて佇む一人の存在だった。整えられた美貌、一度目にしたら男女問わず虜にしてしまいそうな顔立ちでありながら、そこに男女はなかった。男でも女でもない、まさに人と武の集合体。プロトタイプ≪刹那≫を兄とした最終完成体≪永劫≫。
「そりゃ久しぶりの兄との再会だ。嬉しいのはわかるけど、あれはやりすぎだ」

SNSでこの小説を紹介

アクションの他のリレー小説

こちらから小説を探す