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lost/bombs
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lost/bombs 73

「勘弁しろ。これじゃ弱いものいじめじゃないか。お前本気で殺りにはきてないだろ」
正面から叩きつけられた凍気は肌を通過して臓腑まで凍らせる。体温を調節して必死に対冷するが、それでも呼吸が苦しく、口からは白い吐息が漏れた。
雄太が朧を睨みつける。虚ろな視線、威圧感など皆無の眼力に朧の方が溜息をつく。
「意味がわからんが、まぁ、リベンジゆえに手加減はしない」
朧の周りの水分が凝結し、無数の雪となって舞い、それらが渦を巻くように高速で回転、やがて彼女の周りに土星の衛星のように白い円輪が生まれる。単純な氷の刃ではなく無数の氷片によって血肉を削ぎ落とす領域だ。
「凍る星屑」
雪の領域に触れる物質が一瞬で氷結し微細な砂となって散っていく。彼女の周りに展開された雪の星屑は物理的防禦を一瞬で削り取る。たとえ十センチ以上の鋼鉄であろうとも、それが人外の化生の血肉であろうとも、だ。
「いくぞ」
朧の宣言と共にその姿が掻き消える。見えたのは銀色の残影。直線的に迫るそれはまるで銀の疾風だ。直前上に塞がる瓦礫を一瞬で塵と化しながら銀の風は迫り、雄太は足の脚力を最大まで強化して地面を蹴り上げる。塗装された地面が大きく捲りあがり五十メートル四方の壁となって銀の風へと落ちてくる。それを銀の疾風はそのまま突進、その中央に風穴をあけて雄太へと迫り、必殺ではなく必滅の一撃を叩き込む。


右腕が肩元から千切れ飛んだ。


「があああああっ!!」
肩から千切れとんだ右腕に激痛よりも消失感が押し寄せる。切断面は滑らかで、滑らか過ぎる為、筋肉が収縮せず血が濁流のように溢れ出てくる。雄太は傷口を押さえながら後ろに飛び、更に迫る朧に喉を強化させて超音波領域まで圧縮した咆哮を叩きつける。
「温いな」
朧の囁きと共に微細な氷の震動が、声――音波の震動の大半を対消滅させる。朧は失笑を浮かべたままに突進し、流れるように蹴りが走る。風を切り裂いて放たれる打撃を、左腕で受け止めるが右腕を失ったバランスで体勢が崩れる。
そこへ放たれる氷雪の奔流。辛うじて跳ぶ事で躱し、地面を一瞬で削る。諾々と零れ落ちる肩の血を抑えて雄太は唇を噛み締め、そして笑みへと変える。
「そうか・・・・・いや、そうだな」
「?」

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