PiPi's World 投稿小説

lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

の最初へ
 58
 60
の最後へ

lost/bombs 60

理解しようにも、余りにも突然な涙。更に感情が付属してないことに戸惑う雄太に根国から声がかかる。
「境域を解除できました。脱出します!」
「ああ、分かった!」
根国の言葉に返事するが、視線は黄泉を捉えたまま、ジリジリとゆっくりと動くしかない。右足を傷つけた状態で狙撃を回避するすべは少ない。しかし黄泉は涙に暮れた黒曜石のような瞳で雄太を見るのみ。
よく見ればその瞳には何の感情も浮かんでない。ただ涙が流れているだけだ。
わからない。一体なんだ、こいつは。こんな奴だったのか?こんな【人】ではなかったような気がするが・・・・・
「いいから早く来てください。彼女はまだ無視していいですから」
根国の言葉には確信が秘められていていた。雄太は傷ついた右足を持ち上げるように、左足でケンケン状態で歩く。一応用心はしていたが、そんな雄太にも攻撃をしてこない。
雄太はわけわからないまま、騎士団を脱出した。



上空で鳴り響いていた轟音と閃光は収束した。残ったのは血塗れの白虎の上半身。左腕は根元から千切れ飛び、その右目からは眼球は消失していた。
そんな状態で生きられるはず無い。猫目の少女はため息をつきながら白虎の骸を持ち上げている。
「あ〜あ、しょうがないとはいえ知り合ってから何百年も経つ旧友を殺すのは少し心が痛いわね」
猫目の少女の顔には僅かな悲しみがあった。
「でも、これも≪約束≫には必要だったこと。あ〜あ、あの女もこんな気分だったら少しはいいんだけど、多分違うんでしょうね。あいつは私と違ってどこまでも病みまくってるから」
彼女は白虎の死体を投げ捨て、指先に光輝を作る。
「せめて謝罪として花々しく散らしてあげる」
膨大な光が、白虎の死体を全て蒸発させ、大空に巨大な光の筋を生み出した。
全ての雲が霧散した中、浮かび上がる≪街≫から離れた巨大な山々。崑崙が彼の死を哀しむように虹を作った。

SNSでこの小説を紹介

アクションの他のリレー小説

こちらから小説を探す