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lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

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lost/bombs 59

視線を僅かに動かし、根国の方を見る。
赤い紐が複雑な文様を地面に描き、それが時間と共に複雑に動いているのが見える。さながら魔方陣の上にいる魔女だ。
「っっと!」
雄太が視線を逸らした瞬間に黄泉の銃口がこちらを向いて銃弾を撃つ。軌道は見えない。横に跳躍し更にそこから腕の力のみで反転、そのまま黄泉の懐に潜り込み、横薙ぎの渾身の肘を拳銃へと叩き込む。
せめて武器を破壊できればと思った攻撃は、今度はすり抜け、思わず体勢が崩れた首に所に流れるように蹴りが叩き込まれる。咄嗟に右の掌で受け止めるが、衝撃は重い。
しかし受け止めた。掌は確かな質量を持って拳を掴んでいる。そのまま手首を捻る。相手が世界位相変動を使っているとしても、手首を捻ることによって粉砕する投げには全体で応じなければ骨が砕け、手首が千切れ飛ぶ。もちろん、それも再生可能だろうが相手の銃弾の攻撃が減るだけでも十分。こちらは別に殺すつもりはない。ただ時間が稼げればいいだけだ。
黄泉の体が機械的に全体で回転することで手首の粉砕を防ぎ、そこまで予想通り、しかしそこから放たれる蹴りは予想外。
予想外の角度から放たれた蹴りが鳩尾に突き刺さり、腹筋を衝撃が貫く。それによって握力が緩み、その瞬間に黄泉の体は蹴りの体勢から更に右の銃底を横薙ぎにコメカミに叩きつける。てっきり銃撃が来ると思っていた雄太は見事に食らい、そこで左の銃撃が来る。
僅かなタイミングで思考速度を強化し、このままでは眼球へと打ち込まれることを察知し銃口へと掌を当てる。
「がああっ!」
激痛が脳髄を汚染し、意志を微塵に噛み砕いた。
手の甲に穿たれた僅か人差し指程度の穴。そこから響き渡る痛みはまるで右腕全部を噛み砕かれたような痛みだ。
在り得ない激痛を必死に奥歯を噛み締めて堪えながら雄太は黄泉の更なる銃撃を避ける為に、左手に渾身の力を溜め込み、地面を砕き割る。
位相転換していても地面は接続していなければ立つこともままならない。黄泉がバランスを崩し、その瞬間に雄太は後ろに思いっきり跳ぶ。
拳銃の射程距離などは一切考えずに。
その雄太の右太腿を、再び不可視軌道の弾丸が貫いた。
おぞましいまでの激痛に雄太は無様に転がるが、それでもすぐさま四つん這いに似た体勢を取り、次なる攻撃に備えるが、黄泉は攻撃してこない。
ただ虚ろな表情は変わらず、その瞳からなぜか涙が零れ落ちていた。
「?」
なぜ泣く?
悲しいからか、悔しいからか、嬉しいからか?
虚ろな表情のまま死人のような顔で彼女は泣く。

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