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lost/bombs
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lost/bombs 57

文字通りの血霧。原型どころか肉片も残らない鏖殺。
ゾワリと背筋を震わす雄太の眼前に現れたのは黒衣の礼服を纏った黄泉。だがどこかおかしい。顔に色がない。人形のように虚ろな無表情のまま二丁拳銃を構えている。まるで死人だ。
「【無(む)】【虚(うつろ)】」
そういう名前の拳銃なのか、二丁拳銃の銃口をこちらに向ける。
恐らく能力の応用で弾丸を全弾装填時に黄泉帰らせて弾切れをなくしているんだろう。だがそんな理屈が今、必要ではないことは確かだ。
右に飛ぶ。
強化した脚力は一歩で十メートルの距離を走破する。
そんな雄太を恐ろしい程の精度で銃口で捕らえ、発砲する黄泉。再び機関銃に匹敵する銃弾の掃射が襲い掛かる。紙一重で躱す場所が無い。そのまま横に転がり、掃射を交わし、そして苦痛の蠢き声を漏らす。
右足を弾丸が貫いた。焼き爛れるような激痛に指先で銃痕を抉り血肉を投げ捨てる。
一体どこから?
狙撃手? いいや狙撃は黄泉が現れてからは中断されている。それにこの痛みは間違いなく黄泉の拳銃弾の痛みだ。放たれた銃弾は全て交わしたはずだ。
疑問が浮かぶが、黄泉の動きは停滞がない。流れるように体捌きで間合を縮めてくる。
わざとこちらの得意な距離で戦うつもりか。
雄太は迎え撃つように距離を縮め、その貌めがけて蹴りを放つ。手加減は無い。並みの男ならばそのまま頭蓋骨が砕け散ってもおかしくない蹴りが死人のような貌へと放たれ、しかし虚空を蹴るのみ。
交わされたと気付くと共に脇腹に押し付けられる銃口。
発砲されるよりも早く右手で銃身を弾き、刹那遅れて銃弾が向こう側の木々の峰を穿つ。更に逆の拳銃が跳ね上がるのを見ながら左の肘を放つ。
並みの鉄球よりも威力がある肘が拳銃を打つが砕けない。むしろ砕けたのはそれを握る黄泉の手首だ。すぐさま蘇生しているのを見ながら更にその顔面と胴体に向けて数発の拳と蹴りを打ち込むが手ごたえは無い。

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