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lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

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lost/bombs 56

「殺しますか?」
「いや、いい」
あれほどの距離を離れて攻撃する為には手加減できない。狙撃銃は連発には向かないことから予測しても十分に逃げられる。
「それよりまだなのか、境域というのは」
「いえ、既についてますよ。ただ境域が閉鎖されてますね。こじ開けますから少しの間護衛をお願いします」
根国の手の平を突き破って再び現れる紅い紐。それは地面に沈み込むように落ち、そして彼女は目を閉じる。境域をこじ開けるというものがどういうものかは知らないが、時間がかかるというなら護衛してやる。


桃栗黄泉は人じゃない。
幼少の頃は化物ではなく人間でもなく、ただの家畜として存在していた。幼き頃から血肉を削られ、育った後は玩具として弄ばれ、心は腐れ、肉は膿み、それでも彼女が生き続けてこれたのは、ただ一つ。
明日を望まなかった。夢がなかった。生きる意味がなかった。存在することを望んではなかった。
生きてなかった。既に死んでいた。だから死ななかった。死体を殺す術がないように黄泉は死ななかった。私には彼女を語る言葉は無い。唯一の半身、私と同じく作られた偽者。ならば私と同じ血肉を分けた姉妹よ。せめて最後は人として死になさい。


騎士団の槍が疾風の如き速度で放たれる。一つ一つが百キロはありそうな剛槍が一度に七つ。しかしそれを迅雷の速度で雄太は交わし、カウンターで拳を叩き込む。騎士が吹き飛ばされ後ろの大軍を薙ぎ払う。その間もライフルの玉は唸りを上げるが狙撃手の指の動きを見て捉えた後、場所を三メートルほど移動すれば間違いなく当たらない。目の前で高速の近接戦闘を繰り広げながら、更に遠距離からの狙撃を対応する力は明らかに上がってきている。まるで月が満ちるような勢いでの上昇だ。
・・・・・・・・わからない。何故なんだ。
疑問が過ぎる。過ぎる余裕がある。槍が投擲され蹴りが叩き潰す。相手を殺さない余裕まである。雄太が違和感に眉を潜める中、根国は紐を操りながら笑う。
「本命が来ますよ」
「本命?」
雄太が尋ねると同時に銃声。しかも一発に聞こえるほどの超高速射撃の中に含まれているのは三十七発の銃声だ。身を翻し、今までいた所の騎士団が血霧と化す。

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