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lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

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lost/bombs 53

だから気付かなかった。
黄泉の唇が強く噛み締められ、その唇の間から憎悪の言葉が零れ落ちていたことに。


「・・・・・私を憐れむな・・・・」
何度も悲鳴をあげて、何度も助けてと泣き叫んでも助けてくれなかった。憐れみを宿した瞳で見るだけで助けを求めて目を逸らすだけ。それがどれほどの絶望を生んだか、お前らはわかってるか。
幾度となく殺され嬲られ、悲鳴を上げる私を最後には生ゴミのように侮蔑される想いをお前らが、わかるか。助けてもくれない憐れみなど屑以下だ。
全身の痛みが能力によって治りながらも黄泉は自然と涙を零していた。悔しさと空しさと、何よりも過去の恐怖を思い出して子供のように震え、泣いていた。
「畜生、ちくしょうちくしょう!!」
両手で体を抱きしめ、子供のように恐怖に駆られる黄泉の側に一人の少女が舞い降りる。
「大丈夫、黄泉?」
「・・・・・・クィーン」
現れた少女は優しく黄泉の体を抱きしめる。彼女が幼い頃にしたように。母親のように優しく抱きしめ、あやしつける。
「あの子の下僕も酷いことをするのね。折角忘れかけてたのに。大丈夫、また記憶の奥底に眠らせてあげるから」
少女の指先が黄泉の頭の中に沈みこむ。
指先が物質世界を凌駕し、精神世界へと侵食、形成されつつある過去の恐怖を破棄する。
「あ、ああああああああっ」
ビクビクんと黄泉の体が電流でも流されたように跳ねる。この世の純白よりも白い少女が微笑む。
「そろそろ、この玩具も壊れ時かな?」
悪魔は天使よりも優しい笑顔で微笑むゆえに悪魔だと罵られる。


猫目の少女は高度三千メートル上空にて虎仙と激闘を繰り返していた。重力の束縛を自分の周りに形成した自己世界によって改竄し、指先に自己世界によって生み出した摂氏五千度を超える超高熱を生み出す。放たれた五条の光は雲を貫きながら虎仙へと迫り、それを複雑な動きで躱す。

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