PiPi's World 投稿小説

lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

の最初へ
 4
 6
の最後へ

lost/bombs 6

体中の筋力を一気に強化して獣の速度で飛び掛り、その細首めがけでナイフを走らせる。
しかし、直前、人影は僅かに後ろに身を逸らすことで斬撃を回避、雄太は流れるままに拳を放つが、それも交わされる。
そして三度目の連撃を打ち込もうとして微弱な金属音と風切音を聴覚が捉えて後ろに跳ぶ。
地面においていた箪笥が無惨にも数百の部分へと解体された。
キュルルルと音を立てて人影の掌に仕舞われる無数の糸。
「鋼糸使いか」
「違うね」
人影の笑みと共に分解された箪笥の木材が宙に浮かぶ。
「人形繰りさ」
宣言と共に木材が高速で襲い掛かる。その速度は弾丸より若干遅い程度。大きさが違いすぎるため、当たれば簡単に肉をそぎ落とし、骨をへし折る威力だ。
「やべっ!」
脚に力を込め、一気に室内を走りぬける。まるで機関銃のように走る後を貫いていく木材の魔弾。しかし逃亡を防ぐように鋼糸が網を張る。ナイフを煌かせ切断するが、その分、速度が落ちる。
「ちっ」
片方で鋼糸を切断し、もう片方で木材の弾丸を切り落とす。その間も人形繰りは更なる糸によって弾丸を宙に浮かべていた。テリトリーの領主は明らかに相手。
「どうしましたか? まさか、この程度で終わりの筈はありませんよね」
「舐めやがって」
一気に地面を蹴り天上に逆に着地。この部屋は天上まで二メートル弱。強化した脚力で更に天上から人形繰りへと迫る。
「へぇ」
まさか立体的な移動方法を使うとは思ってなかったのか、人形繰りは僅かに驚きを表し、しかし、包帯から覗く唇を嘲笑へと変えた。
「甘いですよ」
人形繰りの地面に落ちていた木材が複合し、巨大な右腕を形成、人一人分はあろうかという巨大な拳を撃ち放つ。
拳はそのまま雄太を殴りつけ、吹き飛ばし―――その瞬間、雄太はにやりと笑みを浮かべて勢いのままに壁の側面に着地、その勢いを脚で蓄え、先程の数倍の速度で腕を掻い潜る。
そしてナイフを走らせ腕を解体。そのまま一気に人影の懐へと飛び込み――腕を極限まで強化。
「死んでろ」
ナイフが強烈無比な威力で人影の胴体を薙ぎ払う。
飛び散る鮮血と臓腑。上半身と下半身は斬撃のあまりの威力に吹き飛ばされ、十メートル以上に離れる。
雄太は顔に飛び散った黒い血を裾で拭う。
人形繰りの顔を覆っていた包帯が取れ、昨晩見た眼鏡をかけた女性の顔が現れても、雄太の顔には義憤は無い。

SNSでこの小説を紹介

アクションの他のリレー小説

こちらから小説を探す