PiPi's World 投稿小説

lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

の最初へ
 41
 43
の最後へ

lost/bombs 43

戦闘時に感じる狂ったような闘争欲ではなく内側からジリジリと火の粉が舞い上がるような感情に、雄太は思わず呻く。
「ぐっ」
「どうしますか?」
それを見ながら傀儡使いは囁く。
黄泉はさすがに諦観していたが、始めて見る友人の態度に訝しげな顔を隠せない。だが傀儡使いは彼女への注意は全くと言っていいほど払っていなかった。地面に横たわる雄太は傀儡使いを見上げる。
「お前らについていけば妹に会えるのか?」
「いいえ」
傀儡使いは首を横に振る。
「あの方は既に私達の遥か上の領域に居ます。だから、あの方が会おうとすればいつでも会える。しかし、あの方は多分、これから貴方を連れて行くあの場所以外で貴方に会うつもりは無いでしょう」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・何故だ?」
「『約束』だからですよ。貴方が忘れてしまった」
約束。失った記憶の端にある結晶。唯一の過去への幻想。
傀儡使いの言うとおり、顔も名前も忘れた妹へと繋がるたった一つの糸。
それを言われて俺は反論する言葉はない。出るはずがない。
「わかった。付いていく」
雄太は頷き、傀儡使いは微笑む。黄泉の声が遮った。
「ちょっといい。あんた、ここからソイツを出す気?」
「いけませんか?」
「いや、それは無理。私が捕まえたらなんとかなるかもしれないけど虎仙が捕まえたんだから他の騎士団長とは相互不可侵ってのがここの約束で――」
「ならば結構」
傀儡使いは糸を走らせ牢獄を構成する鉄柱を切断、返す手で雄太の体を縛っていた拘束服を両断する。パラパラと散る下に着込んだ私服には一切の傷はない。
「騎士団の敵対行為と思ってください」
「あんた、本気!?」
「ええ。この方をあの場所へと連れて行くことが盟主様のお願いですので」
傀儡使いは躊躇なく答え、黄泉は唖然と口を開く。

SNSでこの小説を紹介

アクションの他のリレー小説

こちらから小説を探す