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lost/bombs
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lost/bombs 42

「悪魔ですら自白するとまで言わた騎士団の牢獄でこんなに熟睡するなんて心臓に毛が生えてるんでしょうね」
呆れながら黄泉は側にあった鐘を鳴らす。部屋全体に響くような音に雄太の瞳がゆっくりと開かれ、部屋の外で見る二人に気付く。黄泉を見た雄太の瞳は一瞬だけ何かを探るように動くが、すぐさまソッポを向いた。
その態度に黄泉の眉にシワが寄る。
「なに?」
「あんたかと思ったが、なんか違う・・・・・似てるだけじゃない。匂いもするけどなんか違う」
「違うって何とよ」
「・・・・・・・・・・・・・・」
雄太は無言で辺りを見回す。そして自分を包んでいる拘束服を見て強化を発動。ミシッと音を立てるが拘束服は破れない。対進化者用の特別製。虎仙ほどの使い手ならば容易に破れるだろうが雄太はその領域には到達していない。だが敗れないでも突破する方法はある。問題なのは目の前の二人。
「俺になんのようだ?」
尋ねたのはそのままずっとおられても困る為だ。
「貴方に来てもらいたい場所があります」
答えたのは包帯を纏った傀儡使いだった。深紅の瞳は相変わらずだが中身は同じかはわからない。声も音階が若干違うような気がする。
「どこだ?」
「貴方には来てもらわないといけない場所としか教えられません」
「それで来ると思ってるのか?」
嫌味でなく素直な返事だった。幼子ではあるまいし、と思って放った言葉は、しかし傀儡使いの笑みで停められる。包帯の奥で見えないというのに分かった。
「貴方・・・・妹君のことをどれだけ覚えていますか?」

その瞬間、雄太の全身の血が沸騰したような気がした。

呼吸が止まるような沈黙。
黄泉は傀儡使いを見て眉を潜め、雄太は唸るような、岩が軋むような声をあげる。
「・・・・・・・どういうことだ」
「その言葉通り」
「・・・・・・・妹のことを知ってるのか」
「少なくとも名前すら覚えてない貴方よりは幾分か」
その時の雄太の内面に蠢いていた感情をなんと表現すればいいのだろうか。虚無に限りなく近い、それなのに今まで一度も感じたことが無いほどの熱があった。

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