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lost/bombs
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lost/bombs 38

「お主、血の匂いが濃い。人殺しじゃろう」
「ああ」
虎仙の質問に雄太はノータイムで答えた。そして雄太も淡々と呟く。
「俺以上に血の匂いが濃い、あんたには負けるけどな」
「・・・・くくッ、やはり同類か。いや多少は違うようじゃが、うむ、なおさら面白い。お前・・・いや草薙雄太と名乗ったか。草薙よ、儂の騎士団に入らぬか?」
雄太の瞳が細まり、自分より小柄な老人を訝しげに見る。暫くした後、雄太は説明するように言った。
「勧誘か。なんでだ? 断言できる。俺はあんたらの部下の一段階、いや二段階は劣る。更に集団行為は苦手だし、他人の心なんて気に留めない。勧誘する意味が無い」
「お前が面白い。それだけじゃよ。それ以下でもそれ以上でもない」
虎仙は屈託無く笑うが、年の功だ。内心でどう思ってるのか、わからない。
だが答えは一つ。雄太は僅かに腰を落とし緊張感を引き締めながら答える。
「断る」
「合法的な殺しが出来るぞ。殺しても誰も何もいえん。お前が目的とする騎士団長の首元へと近づける。それでも断るか?」
「ああ、断る」
雄太は全身を強張らせた。神経を研ぎ澄ませていたのに虎仙の姿が背後に回り込むのを見えなかった・・・・気付けなかった。ぞくぅと背中の震えは今日だけ何回目なのだろう。つくつぐ人外魔境に相応しい≪街≫に棲む≪住人達≫だ。
「断るなら殺す、と言ったらどうかのぅ」
「、断る」
「クッ、とこどん、不器用な奴じゃ」
背後で殺意が吹きあがる。荒々しい暴力的な殺意じゃない。先程の騎士達が放った冷徹な殺意を更に凝縮し、圧縮し、透明感を増した、まさに≪殺すだけの感情の刃≫。背後の見えない相手から叩きつけるのは思った以上に重い。
ただでさえ、相手は別格の格上。振り向くよりも一瞬で殺されても、おかしくない。
雄太は呼吸を整える。静かに深く一瞬の一瞬、刹那を越える刹那に命を懸ける。無音が世界を覆った。光も差し込まぬ絶対空虚の世界で、雄太一人のみが佇む。全身の筋肉の細胞すらも感じることが出来る、孤独の世界。
雄太は動いた。己の限界とも言える速度で前進。そのまま振り向けばその隙を狙われる。ならば、まず直進し引き離してから狙う。孤独の世界の次に飛び込むのは高速の世界だった

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