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lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

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lost/bombs 35

まるで巨躯の虎達に襲われる兎のような不恰好な戦闘。
しかし、それこそが現実。雄太は殺人鬼ではあるが戦闘者ではない。高度に訓練された戦闘のプロ達の集団との戦いになれば、こうなることは骸が警告していたことであり、雄太自身も自覚していたこと。
・・・・まだか。
右肩の激痛を堪え、幾百幾千にも見える怒涛の槍撃を辛うじて交わしながら雄太は一日千秋の思いで待ちわびる。黒髪の騎士を。
理由はわからない。もしかしたらこの前の戦闘の怒りかもしれないし、お返しを叩き返したいだけなのかもしれない。そのわからない感情のままに全く勝機のない戦いを売る。
・・・・・狂ってるな。いや、それは元々か。
殺人者として他の常識外ではあったのは殆ど理解していたが、この≪洛妖≫に来ては狂いっぱなしだ。いや、≪妹≫のことを思い出してからか。
心の中で渦巻く言い様のない感情を持て余しつつ雄太は放たれる槍の攻撃を躱す。
直線的に迫る三本の刃。その間から予想される回避場所へと迫る二つの刃。それを認識しつつ、それ以外の回避場所へと身体を滑り込ませ、続けざまに放たれる五本の方天戟から身体を逸らす。
刹那が永劫とも感じられる瞬間―――皮膚が死の予感にざわつき、喉が乾き、水分の飢えを感じる。
全身の意識は騎士団全員、三十七名の気配を感じて知能は瞬時に、雷光のような思考でその攻撃範囲を嗅ぎ取り、死の匂いが漂う場所から身体を退避させる。
それでも足りない。反撃の糸口さえもないほどの高密度に練成された攻撃方法。
目の前の騎士達は飢えた虎どころではない。竜すら噛み砕く神虎なのだ。
「ぐううっ!」
交わしきれない方天戟の矛先が皮膚を削り、まるで肉も骨も削り取ったような激痛を与えてくる。
僅かに動が止まった雄太を一斉に騎士達は押さえ込む。
槍衾のように全身を方天戟で押さえつけられる雄太。僅かに動くことでも出来ない。全身の筋力を最大限まで強化させ、弾き返そうとするが微塵も方天戟は動かない。
「がああっ!」
雄太は咆哮を上げた。鼓舞するように、あるいは獣の最後の雄叫びのように。雄叫びの後に笑い声が続いた。
「往々、中々威勢のいいガキじゃのぅ」
「・・・・・・・・・・・・・・」

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