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lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

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lost/bombs 32

「殺すたびにこうなるのか?」
「ああ。間違いなくなる。大抵は部屋に戻るまで我慢できるんだけどな。今回の奴がよほど面倒なことを言ったんだろう」
骸は淡々と呟きながら朧の小柄な身体を背負う。ガキだと思っていたが、背負われて涙を零し、悔やむようにして呟き続ける朧の姿は幼い子供だった。
「十五歳と言ってたけど、嘘だな」
なんとなく感覚的に違うことはわかっていた。獲物にしてきた相手にはその年齢の少女もいたから、なんとなくだが嘘だと、わかる。
「はっ、また嘘ついたのか。コイツは。子供だから嘗められるとでも思ってるのかね。義妹は今年で十三歳だよ」
「年齢を誤魔化すなんて、本当にガキだな」
思わず雄太が呟いた言葉に、骸は笑みに破顔し、背負った朧の長い銀髪を指で撫でる。
「本人には言ってやるなよ。こいつは立派な一人前らしいからな」
その仕草に、その雰囲気に、その温度に雄太の心がざわめく。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・兄妹か」
「うん?」
雄太は呟き、空を見上げる。金属のように重く圧し掛かるような空の下。今も血の繋がった化物が蠢いてる筈だ。殺すべき存在が、果たすべき約束の怪物が。
沈殿していた心に波紋が立ち、淀みが吹きあがる。
「・・・・・・・・・・・」
罪悪感など無い・・・・・筈だ。
むしろ何に対しての罪悪感だというのだ。記憶も名前も顔すらも覚えてない化物と化した妹に対する罪悪感か。それとも今まで殺してきた被害者に対する罪悪感か。
「・・・・いや、それはないな」
妹に対する約束は果たそうと思うが、それに罪悪感を感じてはない。被害者に対しても。殺そうと思えば今すぐにでも、・・・・いや、目の前にいる人狼の兄妹を殺しても全然罪悪感は無い。
雄太の心が蠢く。アスファルトだと思っていた地面が実は底なし沼だったような感覚。
「おい、大丈夫か?」
骸のサングラスに隠れた双眸が雄太を見る。
「・・・・・ああ」
言葉を紡ぐのが難しい。頭の中で無数の百足が這いずり回ってるような悪寒と吐き気が押し寄せる。
雄太が手で口を押さえ・・・・次の瞬間、何事もないように立ち上がる。その視線は先程の揺らぎはなく、冷たい黒曜石のような眼球が、店の方を睨みつける。
骸もすぐさま、それ達の気配に気付いた。
「チッ、騎士団か。店のヤツが呼びやがったんだな」

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