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lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

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lost/bombs 31

掌に落ちてきた雪を握り潰しながら呟く雄太に苦笑しながら声がかかる。
「弱者のニヒリズム(虚無主義)。それがお前の殺人の理由か?」
楽しげな笑い声に雄太は振り返る。当然のように骸がいて壁に叩きつけられたはずの傷も無い。人狼の治癒能力か。ただ、その顔には先程の不意打ちに対して、何の感情も無いのが見えた。
「復讐はしないのか?」
「復讐? なんの?」
「先程の不意打ちに対して・・・・」
「別にぃ。毎度のことだからな。それに殺したんだろ。殺した相手にどうやって復讐するんだよ」
ニタニタと骸は含み笑いを浮かべる。
ああ、そうか。もうコイツは興味が無いのか。
殺したなら既にゴミ。燃えて捨てられようが土に埋められようが、その後など興味は無い。
死んだら終い。
単純かつ明快な答え。・・・・・雄太と同じ。
「なら、次に、あれをどうかしろ」
「ああ、あれね」
雄太が指差した方向では未だに朧がブツブツと呟き、時折、凍気や怒気を荒らして大声で唸っていた。明らかにおかしい。異常とも言える現象だが骸は肩をすくめるだけ。
「そのまましておけばいいよ・・・・ほら」
骸の視線の先で朧が顔を白蝋人形のように白く染めて地面に倒れる。唐突な、まるで電池を切った玩具のような昏倒ぶりに雄太の目が急に冷め、半眼になった。
「病気か?」
「少し違うけど心にえらい針が刺さってるんだよ。針っていうか槍っていうか、鉄柱なのかは知らないけど超弩級の奴がな。それのせいで異貌憑きとか関係なく人を殺すとああいう風に少し壊れる」
「心理的外傷(トラウマ)か」
「へぇ、殺人鬼の癖に精神には詳しいんだ。外傷に詳しい殺人鬼は知ってるけど精神分野を知ってる殺人鬼は初めてだ」
「なら、お前はまだ殺人鬼のことを知らないだけだ。人を殺すのに肉体も精神も区別ない」
ポツリと雄太は呟き、地面に倒れこんだ人狼少女へと近寄る。ビクビクと陸に上げられたように痙攣し、あれほど凛々しかった瞳が見開くほどに開かれ、壊れたように涙を零し続ける。小さく開かれた唇が僅かに動いているのを見るが、聞かなかった。

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