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lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

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lost/bombs 30

例えプラスにならなくてもマイナスの状況ならゼロにした方が楽になるのに。
人狼の女の人の掌に極大の凍気が凝縮され、右腕を中心に白煙が、とぐろを巻く。
まるで右手を頭にした白龍のような圧倒的な凍気は狂咲桜を、そして少女を一瞬で噛み砕くだろう。
恐怖はあったが、それでも少女は今まで一度も獲物から言われてない言葉を・・・・・絶対に言おうと覚えた言葉を紡ぐ。
「あ・・・・りがと・・・・う・・・・・」
凍気の奔流は少女を、少女の身体に救う狂咲桜を一瞬で凍結して砕き、微細な雪の欠片へと変える。
憐れな少女の生は、こうして終えた。




ギリッと朧は奥歯が鳴るほど歯軋りした。
目の前の雪の結晶に、狼の気高い瞳は怒りと苛立ちに染まり、全身から凍気とは正反対の怒気の熱気が噴出す。
「だから異貌憑きは嫌いだ。どいつもこいつも殺したがりの死にたがり。死んでください。殺してください。人にせがむな。吐き気がする」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
朧の感情は明らかに目の前の少女だったものとは違う、他の誰にかに放たれているように見える。
暴発。その言葉が頭を過ぎった。銃が不自然に熱しられた時、装填された弾丸が内部から破裂し、自らの身体を砕く。
「大丈夫か?」
「大丈夫かだと!当たり前だろ!私は一度も手傷を負ってない。一度もだ。それなのに大丈夫じゃなかったらおかしいだろ!」
「・・・・・・・・・・・・・・」
明らかに、おかしい。この少女と知り合って然程時間が経ってないが、こういうニンゲンではない・・・・筈だ。過去の後悔か、罪悪感か。
何か、わからないが、とりあえず雄太は軽く溜息をつく。
≪・・・面倒クサ・・・≫
そして雄太は空を向く。
異貌の少女の成れ果ての雪の結晶が空を舞い、そして、いつの間にか、空に溜まった暗雲から今年初めての初雪が降り始める。
純白と純白と重なりあい、やがて区別も付かなくなる。
名も無い少女が望んだ≪虚無≫となる。
「何もかもが一切なし・・・・・そりゃあ、最高だろうな」

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