PiPi's World 投稿小説

lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

の最初へ
 2
 4
の最後へ

lost/bombs 4

「どうぞ」
否定もせず、牛丼を受け取り、中身の肉量や米などを無視して、そのままかきこむようにして食らう。
口の中に広がる牛丼特有の味を感じながら、然程、感慨も浮かばないことをわかり、納得したような不満のような気分を浮かばせながらも、ガッガッと書き込み、一気に食い終わる。
まだ食い足りない気分はあったが食いすぎても気分が悪くなるだけ、今日はやめることにして金を払って店を出る。
「そろそろ雪が降りそうだな」
外は凍えるように寒い。黒い外套を羽織りたい所だったがさっきの人狼との戦闘の時にやった強化による大量の発汗でベトベトだった。家まで我慢することにする。
「あれ?草薙君じゃない?」
そして立ち去ろうとする寸前、名前を呼ばれた。
振り向くとそこには眼鏡をかけた女性が佇んでいる。
誰だ?見覚えは…ない。
元より記憶力が無いほうだから。しょうがないが年齢からオレより五、六歳上のように見える。
明らかに同じ学校ということもないだろう。
困惑する雄太の前で、女性もまた同じように困惑し疑問を浮かべるように尋ねてくる。
「草薙・・・・雄太君よね?」
はい、そうです。貴方は誰ですか?
そう尋ねるのは何の不自然も無い。相手の心情を思いやるという優しさは雄太の中に欠片も無いが、ただ、面倒くさいという感情が心の中で渦を巻いた。
「いいえ、違います。人違いじゃないですか?」
「あ、そうなんですか。すみません」
眼鏡の女性は恥かしそうに頬を染めながら頭を下げて謝罪した。
「それじゃあ」
実際のところ、然程人間関係に興味が無い雄太はそのまま手を振り、女性と別れていく。明日になれば、その記憶も殆ど無いに違いない。
虚ろであり、流されるままに流れる雄太は、そのまま女性と別れて自らの住居である廃ビルの一室に戻るなり、薄汚れた紅いソファに寝そべる。
所々から綿がはみ出ているが、十二分に使える品だ。
外套は適当に放り投げ、ソファに座り込む。
「あー、しんど。今日は色々面倒くさいことが多いな」
体中の筋肉は疲労に熱を持ち、神経は度重なる強化によって痺れるような痛みを訴えてくる。
このままじゃ眠れないな、と溜息をつきながらソファの側に設置している冷蔵庫を空け、中に入っている缶ビールを一つ取り出し、そのまま飲み干す。
口の中に広がる苦い味に思わず苦笑しながら、そのまま一気に飲み干し、缶は水置き場に投げ捨てる。

SNSでこの小説を紹介

アクションの他のリレー小説

こちらから小説を探す