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lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

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lost/bombs 29

「じにだい・・・はやく・・・・じにだい・・・・」
少女は徐々に衰弱しながら殺されていく獲物の口癖を呟きながら自殺行為を何度もおこした。全て失敗した。既に彼女の生ではなく狂咲桜の宿主としての生だったから、≪それ≫にとって彼女の死は決して許すことが無い裏切りだった。裏切りには制裁が下る。体中を狂咲桜の根が這いずり回り、臓腑や肉をゆっくりと削るように養分にしていく激痛に、少女の身体は何度も地面をのたうち回った。
「ぃいいいぎぎぎいぎぎいいぃぃいいぃあががあっいいいいいぃぃぎぎいああああいいいいいぃいい」
そうして少女は生きていた。
壊乱都市の中を歩き、殆どの者には侮蔑の眼差しで見られ、優しさを与えてきた者を容赦なく咀嚼し、忌まわしい呪われた生で、生き続けたくないのに生かされ続けていた。
だから雄太に近づいたのも、特別な感情や理由じゃない。
狂咲桜が獲物を欲していたから。それを中止させて痛みを味わいたくなかったから。ただ、それだけ。

「ごふっ!」
名も無き少女は吐血した。氷剣の刃は狂咲桜だけでなく生身の部分まで貫いている。十分な致命傷。それなのに人狼の女の人はトドメまで射すつもりらしい。
少女が笑う。
無邪気に、嬉しくてしたないとばかりに微笑みながら木肌に覆われてない藍色の瞳から一滴の涙を零す。
『じにだくない・・・・じにだくない・・・じにだくない・・・・じにだくない・・・・じにだくない』
涙を零して見苦しくも必死に生きようとする獲物の姿を、彼女は何度も見た。
憐れだと思った。無様だと何度も思った。何故生きたいのかと何度も疑問に思い、その純粋さに生きることの喜びを知ってる彼らの生に憧れた。
しかし違った。彼らは喜びがあるから死にたいんじゃなかった。ただ、そう意味も理由も無く『生きたかった』。それだけなのだ。
生への欲求が少女の胸の奥で渦巻き、しかし、それを越える死への欲求を抑えることが出来なかった。
死が救いにはならないと誰が言った絵空事なのだろう。

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