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lost/bombs
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lost/bombs 28

「アア・・・・あああぁぁぁああ・・・・・AaaaaaAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」
だらだらと唾液を零しながら少女は咆哮を上げる。
全身から無数の枝が飛び出し、鎌口を持ち上げるように切っ先を雄太に向け、放たれる。
「・・・・・・・何がしたいんだ、お前・・・・・・」
雄太は放たれた枝の一撃を強化した動体視力で見切り、僅かな動きで躱す。その瞬間、空き地全部から伸びる枝の襲撃。雨のように降り注ぐ枝の掃射を躱しながら拳や蹴りを打ち込み、粉砕する。
砕かれるが、そこは植物。物凄い速度で再生し雄太を絞め殺そうと全方位から襲いかかる。肉体を強化して最速最多攻撃によって迎撃するが、あまりにも数が多い。拳や蹴り、肘や膝、指先による刺突では獲物が足りない。
どうすると一瞬迷った瞬間、凍気を纏った魔風が吹き荒れ、迫る木々を一瞬で凍結、氷片へと粉砕する。朧は無言で雄太の側に現れ、凍気の刃を作り上げる。凶悪凶刃十六の氷剣。鋭い切っ先は枝を生やす本体へと狙いをつけている。
「殺るぞ。いいな?」
「返事を聞く必要は無いだろ」
「・・・・そうか。そうだな」
朧は僅かに唇を噛み締め、両手から放たれる凍気の魔風に剣を乗せる。弾丸のように風を切り裂きながら放たれる十六の魔刃。
空き地から一斉に伸びる枝が複雑な網や壁を作り上げるが、そんなものを霞のように切り裂いて剣は全て少女の幼い身体に突き刺さる。戦場死体のように全身から氷剣を生やして動きを止める異貌の少女。
「・・・・・・・・・・・・・」
朧は忌々しそうに舌打ちした。
この少女を殺したことが苛立つのか、それとも雄太の中途半端な対応に苛立つのか、それとも異貌憑きという存在に苛立つのかはわからない。ただ朧は舌打ちし、そして少女の死体に向って掌を向ける。
「・・・・A,A・・・・ああぁ・・・・」
驚くことにまだ少女は生きていた。いや少女という≪生≫は既に異貌憑きになっていた頃から終っていた。ただ生きているのは、その人外の生命力ゆえの空虚な生だ。

少し、少女の過去を振り返ろう。


異貌の少女、彼女には名前が沢山あり、同時にどれ一つ、正しい名前ではなかった。異貌≪狂咲桜≫に三歳の頃に犯された彼女には常に同じ名前で呼び続けてくれる他者がいなかった。何故なら彼女に取り付いた化物が殺してしまうから。まるで捕食するように目の前で養分という血を吸い取る化物。その栄養が自分の体に入ってくることに嫌悪と共に快楽を感じてしまう自分に嫌悪を抱いたのは八歳の時。既に百名を越える死者を殺した頃だった。

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