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lost/bombs
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lost/bombs 22

「それも名乗れないのか。名乗れないほどのくだらない殺人鬼程度なのか、お前は」
「義兄!」
朧があまりの言い草に吼える。骸と名乗った男は紫煙を吐きながら苦笑を浮かべるが、それでも一片の油断もなく雄太の四肢を、呼吸を見続ける。雄太はポツリと呟いた。
「草薙雄太。お前の言う通りくだらない殺人鬼程度だ」
「そうか」
骸は煙草の吸いかけを吐き出す。宙で灰も残さず燃え尽きる残骸。骸の冷たい眼孔が雄太を捉え、口元が冷笑を浮かべる。
「その程度なら死ね」
雄太の体が一気に横に飛びのく。
そして振り返り驚いた。今までいた地点が何もなかった。揺らぐ陽炎の後には床も壁も全て消滅し、まるで溶鉱炉の側にいるような熱気が漂うのみ。
超々高熱が一瞬で消し飛ばしたのだと気付くよりも早く骸がこちら側を振り向き、サングラスの奥の双眸に輝ッと光が灯る。殆ど反射的に側にあったソファを掴み、投げつけると同時に猛火以上の灼熱がソファを一瞬で消し飛ばす。
『視界媒体の発火能力』
発火能力を持つ進化者はそれほど珍しくない。分子は停止するよりも加速させる方が容易だし、何より人間は体温という熱を常に持っている。
しかし、これほどの高熱を瞬時に、しかも他に影響を与えない精密に顕現させるものがどれほどいるだろう。
間違いなく強敵だ。全身の強化の度合いを更に高め、視線から外れるように部屋の端に飛び、更に天井を蹴って骸の背後へと回る。
骸の視線が1秒ほどだが、雄太の走った経由を遡る。それで十分。拳に強化を走らせ全身の力を引き絞り、必殺の一撃を無防備な背中に叩き込むのは―――。
「義兄もお前もバカか!」
だが拳を放つよりも早く神速の平手打ちが雄太と骸の頬を叩き、地面に叩きつけられる。奥歯がへし折れる音が響くほどの痛撃。雄太と骸が悶絶する。
「ぐおおおおおっ!」
「義妹!さすがにやりすぎっ!おごごぉっ、痛い痛すぎるぞぉぉおっ!」
地面を転げ落ちる二人の男どもに朧は溜息をつく。
「あんたらもう少しは会話しなさい。何よ、それ!いきなり喧嘩腰どころか、殺し合い始めてるじゃない!」
「だ、だってしょうがないだろ。義妹が始めて男を部屋に連れ込んだんだぞ。兄としてはまずボコボコにするのが礼儀だろう!」
「どこの礼儀だ、ボケ義兄!大体、連れ込んだんじゃない。他に置く場所がないから連れてきただけだ」

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