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lost/bombs
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lost/bombs 20


『約束してください』

埋もれた記憶が泡のように浮き上がり弾ける。混沌と暗黒と絶望に満ちた記憶の断片で声がする。聞き慣れた筈の声。既に忘れた声。もう何年も聞いてない声が木霊する。
「私が私だとわからなくなるぐらい化物になったら・・・・哀れで無様な怪物になってしまったら貴方が私を殺してください。貴方が私だとわからなくても私は貴方に殺されるまで・・・・ずっと・・・・ずっと待ってますから・・・・」
必死に抑え込んで声の主は慟哭する。泣き叫びたい気持ちを押し殺して一途に自らの想いを伝える。
「貴方が・・・・・お兄ちゃんが私を殺してくれる日をずっと待ってますから」





目が覚めると目の前には薄汚れたボロボロの天井が広がり、その隙間から陽光が目に降り注いでいた。辺りを見回すが全く見覚えが無い部屋だ。全身が激痛を訴えるがすぐさま治癒能力を強化することで回復を図りつつ、無視して立ち上がる。まったく見覚えが無いことに訝しげつつ、窓――ただの壁の穴にも見える場所から外を覗き込み、声を失う。外には人外魔境が広がっていた。
轟々と地鳴りのように響き渡る人々の日常の声。踏み歩く足音。喋る音。耳が動く度に、尻尾が揺れる度に揺れる音。それらが数万の数集まって怒涛のように街に広がっていた。不快な音ではないが殆ど者が人間の形をしていないことに雄太は驚く。
「ようやく起きたのか」
ボロい扉をあけて人狼少女が入ってくる。腰元まで伸びる銀髪を束ね翡翠色の瞳がベッドから降りた雄太を見つめ、手に持っている紅い玉を剛速球で投げつけてくる。動体視力と右腕の運動能力を強化し、高速で放たれたソレを掴み取る。それは紅いリンゴ。
「食え。朝食だ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

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