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lost/bombs
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lost/bombs 19

先程の全包囲攻撃で辺りには氷の槍が無数に突き刺さっている。このまま交わせば雄太の身体は氷槍に串刺しになる。黄泉は≪力≫を使わず雄太の一撃を受け止め、そのまま吹き飛ばされた。
「っ」
凄まじい衝撃に黄泉の身体は揺らぐ。傷は幾多も味わってきたがそれを瞬時に無効化してきた身体はその衝撃によって一時的に停止する。≪黄泉帰りの力≫を発動させようにも衝撃で意識が僅かだけ朦朧とする。
そのタイミングを人狼少女は見逃さない。
「凍る棺」
人狼少女の囁きと共に辺りに飛び散っていた氷槍が砕け、無数の氷片となって黄泉の周囲を囲み、四角形の巨大な氷の壁を作り出す。厚さ二メートルの氷壁が前後左右上の五面に展開され、不純物が混じった氷は向こう側を見渡せない。
二丁拳銃で氷をぶち破るが、そこには既に二人の姿形どころか影もなかった。
「はぁ、最悪。やられた」
「・・・・・クスっ、そのようね」
溜息を漏らしながらも不満げに眉を潜める黄泉を見て人形繰りは穏やかに笑う。どうやって彼女に気付かずに近寄れたかわからない。眼鏡をかけた女性の姿は傀儡なのか本体なのかもわからない。ただ十年以上になる有効価値の関係――いや友情と言っても差し当たりない関係は続いている。
「どうやら貴方が彼に致命傷を与えてないのを見て利用したようね」
「ったく大した小娘だよ。男の方はそれほどでもなかったけどな」
黄泉の力を知らなかったとはいえ四肢を打ち抜かれあっさりと戦線離脱した雄太を思い出すと人形繰りは失笑を浮かべた。それに思わず黄泉が問いかける。
「なんだよ」
「貴方、私が手を出さなきゃ死んでたのよ」
「?」
人形繰りの包帯の間から滑り落ちるように一本の鉄筋が出て、自由落下のままに地面に突き刺さる。どこにでもありそうな鉄筋。
だが、その先端が摩擦熱で溶けているのを見て黄泉の瞳が細まる。
「これが不意打ちで後頭部に突き刺さる寸前に私が防いだのよ。脳髄を一撃で貫通するほどの致命傷、いや即死傷から瞬時に『力』は使えないでしょう」
「なるほどね・・・・・・たしかに二人とも油断ならない相手。なら、私は次は『全戦力』を使う。結社の傭兵ではなく正統なる騎士団の長として」
二人の呟きは深夜の深遠の中に響き、やがて消える。その視線は未だ鋭く、獲物を狙う狩人の光を宿し再び再会する日を刻々と待ちわびる。

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