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lost/bombs
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lost/bombs 18

僅かな沈黙の後、朧は素直に言った。
元来追撃戦というものは追う方に圧倒的な有利がある。罠でも作っていないと猟犬に狩られる狐の如く餌食になるだけだ。そして相手が自分より格上ならば確実に待ち受けているのは死。
「そう。お前が出来るのは目の前の敵を食い破り突き抜けることだけ。仲間なんぞ見捨てておけ。戦場で味方は時によって敵以上の敵になる」
「そうだな」
朧は頷きながら全身の凍気を一点に凝縮させ、全身の筋力をたわめる。弓の如く引き絞られた体を使って狙いを定め、そして口元に毒々しい嘲笑を浮かべた。
「糞ったれな軍人の戯言ではその程度だろう」
朧の右足が先程からの凍気の乱発によって地面に張られた氷を蹴り飛ばす。無数の氷の欠片。硝子のように鋭利で凶悪な刃の群れを黄泉は拳銃で打ち落とす。
そして返す手で銃弾を放とうとして次に放たれた巨大な氷の玉を見て感嘆の口笛を吹いた。
直径十メートルはあろうかという超巨大な氷玉。勿論人間など一瞬で圧殺される。
「ハハッ」
黄泉は横跳びにして躱すが右足が逃れられない。鈍い音と共に右足を確実に潰した手答えを感じ、朧は全身全霊で後ろに跳ぶ。
背後にあったのは残骸。鋼糸によって切り刻まれ凍気によって蹂躙された町の骸。
その中を後ろに跳びながら巨大な氷玉に意志を飛ばし破裂させる。それはまるで氷玉の中心で爆発が起きたような破裂。巨大な氷玉は全方位に氷の槍となって降り注ぐ。
全方位爆撃。
これだけの氷の槍が降り注げば右足を負傷した彼女は逃れきない―――筈だった。
しかし彼女は無傷。纏った軍服にも一切の傷も無く佇み、二丁拳銃を弄ぶように回転させていた。
「悪いな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
人狼少女はその態度に・・・・・笑う。無邪気で陽気な笑み。諦めの笑みとはまったく違う笑みに黄泉は初めてゾクッと背筋を震わせた。
「やはり正統法からでは無理だな。悔しいが力の差がある」
「邪道があると?」
黄泉の全身から緊張が漏れる。
「ああ」
人狼少女の右腕が氷の鎖を握りしめ―――大きく振り上げる。
「お前らにとっての邪道が!」
氷の鎖が高速で振りぬかれ、先端に繋がっていた雄太の身体がハンマーのように黄泉へと放たれる。雄太の体重は54キロ。それが人狼の腕力で振り回された場合、大型の破城兵器並の威力と化す。
黄泉は≪力≫を使って回避しようとしてソレに気付いた。

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