PiPi's World 投稿小説

lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

の最初へ
 15
 17
の最後へ

lost/bombs 17

人狼少女の身体全身から瀑布の如く凍気が吹きあがり、世界を侵食する。
建物が、地面が、空が、空気が、生命を侵食し壊死させずには射られない殺意の暴嵐が吹き荒れる。
「素敵よ、小娘」
凍気の奔流の間近で全身が凍気によって凍らされてるのを感じながら、それでも黄泉は高々く誇らしげに、そして優しく微笑む。
「敵はそうでないと倒し甲斐がない」
黄泉の姿が霞となって消える。そして再び出現。
その時には既に全身を纏っていた氷は全て消え、まるで現れたばかりのように圧倒的な凍気によって黒髪に、こびり付いた氷滴すらもなかった。
二丁拳銃の銃口が向けられる。全身から全力で凍気を放出している朧には動けるタイミングじゃない。拳銃の引き金に差し込まれた指が動き、弾丸が放たれる―――よりも速く先に動いていた雄太は走り抜け様に朧の腹を腕で抱えると射線上から飛びのく。
「ぐううっ!」
全身に穿たれた弾痕から与えられる壮絶な激痛。今までの戦闘の経過。強化の連続仕様。目の前が真っ赤に染まる程の深刻的状況に、更に朧に気付かずに近づいた為、凍気の奔流の直撃を受けて全身が壊死寸前。朧がすぐに気付き、凍気を停めるが、その時には雄太は抱きかかえた人狼少女を投げ捨て地面でのた打ち回っていた。
「クッ、何故助けた!」
詰問のような泣き声のような少女の叫びに雄太は苦痛の悲鳴の間から掠れる様な声で答える。
「っっっ!・・・・ぐぁあぁっ・・・・さっきの助けて貰ったからな。その借りだ」
「バカか!」
人狼少女は雄太の言葉を罵倒する。そして振り返る。
そこには氷雪を僅かに纏った黒衣の軍服を纏った強敵が佇む。二丁拳銃は未だに装填し直された様子はない。既に千発は撃ったはずだ。
どうして?と言う疑問が浮かぶが朧はそれを切り捨てた。
敵は未知。≪仲間≫は負傷。人狼の矜持は敵を倒すことよりも仲間を守るを優先する。朧は地面に倒れている雄太に手から伸ばした氷の鎖を絡みつかせる。
「引きずるぞ」
「・・・・・・・・・・・」
雄太の答はない。既に意識は激痛のレベルを超えた神経パルスに耐え切れず失神させていた。掴んだ鎖の手ごたえを感じながら朧は目の前の強敵を見やる。黄泉は笑みを浮かべて二丁拳銃を弄ぶようにしながら見ていた。全身から殺意の奔流を叩きつけながら。
「賢明な判断…と言ってもいいけど逃げられると思う?」
「・・・・・まず無理だろうな」

SNSでこの小説を紹介

アクションの他のリレー小説

こちらから小説を探す