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lost/bombs
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lost/bombs 13

人狼少女の握力が高まり、喉を押し潰すように握り締める。このままいけば呼吸停止よりも頚骨を圧搾されるな、と思った雄太は人狼少女の鳩尾に膝を打ち込む。
「がっ!」
緩んだ手から離れ、更に人狼少女の頬に拳を打ち込み、薙ぎ倒す。そのまま倒れた少女の喉元に脚を乗せる。僅かでも本気で力を伸せば、そのまま首をへし折れる体勢。
「気まぐれで殺さないだけだ。別に意味は無い。だから、それで納得しろよ」
「な、っとく・・・・できる・・・か」
矜持(プライド)か、それとも憤怒(ラース)か。人狼少女の瞳は苛烈な炎にも似た意志が滾っていた。
雄太は溜息を漏らして脚を外す。このまま殺しても何の不都合も無い。ただ殺す気はどうしても湧き上がらない。殺人をやめる殺人鬼ってのは物語的に破綻している。
「どっか行け。少なくとも今、俺はお前を殺すつもりは無い」
「ぐっ、最初から最後まで訳のわからない奴だ。大体、襲ってきたのはお前だろう」
「ああ、そうだ」
深く頷く雄太。益々怪訝げにする人狼少女。外から見れば見詰め合う二人に勘違いしてもおかしくない状況だったが、本人達はとてもじゃないが、そんな雰囲気ではなかった。
そして―――物語的にもそんな状況は在り得ない。
風を切り裂いて二人を切り刻もうと悪意を持って鋼糸が襲い掛かる。だが二人の反応は早かった。残影すら生むほどの速度で回避、そのまま左右に跳び、今までいた地点の地面や壁を鋼糸は切り裂く。
「またか!なんだ一体今日は!?襲われる祝日か何かか?!」
「祝日というより厄日だろ」
雄太の眼球の瞳孔が細められ、極限まで高められた鷹のような視力が遥か向こう側にいる鋼糸の繰り手を見つける。その風貌は先程部屋で殺した女と同じ。
「なんだ、あの女」
人狼少女の方も相手に気付いたのか、訝しげに呟く。
「さぁな。俺の敵ということしかわからん」
雄太は身体を弓のように引き絞り、そして突進。迫る無数の鋼糸を時折、跳躍し、更に身体を捻りながら見事な動きで交わしていく。しかし蜘蛛の巣のように張り巡らされた鋼糸を全ては交わせない。
交わせなかった右腕が鋼糸に絡め取られる。
そのまま引き裂かれる寸前、氷の槍が鋼糸を切り裂いた。

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