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lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

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lost/bombs 12

絶対の間合。必滅を与える一撃を打ち込める場所。
左腕は高熱と低温に壊死寸前だが、もう一発打ち込むには可能だ。全身を独楽のように回転させながら左腕に力を溜め込む。
「グオオオオオッ!」
ミチミチと全身の筋肉が軋む音を感じる。神経が焼き鏝を当てられように熱を発し、肺は酸素を求めて喘ぐ。
後一歩踏み込みと共に拳を突き出せば確実に人狼の少女は死ぬ。いや殺す。
雄太の心に殺人を忌避する感情はない。名前も知らぬ少女を殺すことに躊躇は無い。だが刹那の時間、人狼少女の蒼い瞳を見ているうちに、気付いた。
昨晩殺した人狼と同じ瞳だということに。
雄太の拳がバランスを崩し、絶対必殺の拳の軌道が変動し、少女の頭の横を走り抜ける。
その直線にあった巨大重機を拳圧だけで吹き飛ばすほどの強烈な一撃。
人狼少女の顔に怪訝げな表情が浮かんだ。
「何故やめた?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「答えろ。私に対する侮辱か!!」
人狼少女は牙をむき出しで吼える。その左腕が雄太の首筋を掴み、絶対零度の凍風を纏いつつある。下手なことを言えばそのまま首をへし折られる。そうわかって雄太は答えた。
「面倒臭いから」
「・・・・・・・・・・・・は?」
雄太は淡々と呟きながら全身の細胞が疲労の熱を上げるのを感じ、腰を地面に落とす。
「面倒臭い、だと!?ふざけるな、なんだ。その理由は!間違いなくおかしいだろうが!しかも何故、このタイミングで」
「なら言い方を変える。面倒クサ」
「変わってないッ!」
少女は吼えながら左手で首を握り締める。凍気はいつの間にか霧散し、しかし、人狼の握力だけで雄太を持ち上げる。
決して長身とはいえない少女だ。持ち上げても雄太が立ち上がるのと然程違いない。
「情けはやめろ!」
「・・・・面倒臭いんだ。離してくれ」
「ッ!」

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