PiPi's World 投稿小説

lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

の最初へ
 114
 116
の最後へ

lost/bombs 116

辛うじて相手の攻撃が視界端に見えた。
左の拳の直線打ち下ろし。強化された動体視力と感覚で相手の拳を受け止める。衝撃に空気が弾け、しかし、その腕が獣じゃなく普通の少し小さめの拳で、更に言えば、痺れるような冷たさを纏っていることに気付く。
「そして爪が甘い」
外套の奥で小さく囁く声が聞こえた。
「凍る銀世界」
巨大な凍気の瀑布と氷刃の嵐が身を貫き、眼下の地面へと叩き降ろす。
氷刃の群れが身体のなかに潜り込む。
日本刀のような刺し貫く鋭利さ。筋肉やスジや骨が切断され、翼が千切れる。更に白い瀑布に流される地面には先ほどの闘争の余波である緑色の妖炎が踊っていた。
このまま落ちたら無事じゃ、すまない。
流され、肺に突き刺さった氷刃、その傷口から昇ってきた吐血をはきすて、隻腕に力を込め、熱量を上げる。
瞬時に赤く染まった拳で、押し寄せる白い瀑布を切り裂いた。
この間、僅か三秒にも満たない時間。
そして打ち上げた拳をそのまま眼下の地面へと叩きつけ、砕けた瓦礫の破片で、緑色の妖炎の侵食を防ぐ。クレーターとなった上で雄太は空を見上げ、優雅に笑う人影を見る。
「少しは目が醒めた?」
「俺は殺すしか出来ない」
「いや、出来る。しなかっただけ」
二つの双眸は激突はせず、互いの意志の光を確認するのみ。雄太は全身の体温を上げて突き刺さった氷刃を溶かし、人影は溜息を漏らして指を鳴らし、位相空間に保管していた黄金の鎧を着込む。能力で作られたものか、自動的に装着され、純白のマントと水晶の剣を構える。
「もともと僕は説得できるとは思ってなかったけど、そうなったら君を殺すしかなくなるよ。いい? 今の君の位階はかなり高いけど、僕達よりは明らかに低い。死ぬよ、ガチで」
「それでいい」
雄太は血塗れの顔で頷く。その口元には笑みが浮かんでいた。
「強情」
小柄な人影の姿が消える。しかし、雄太の新化させた瞳は動きを捉え、右端前方から螺旋を描く、抉り取るようなドリルの蹴りを右腕で受け止める。ミチミチと右腕の肉が削げるのは蹴りの爪先から跳ねた金属の爪のせいだ。
「そして馬鹿だ。泣くぞ、誰か」
「泣く奴はいない」
「いる!絶対にいる!」
雄太の腕に突き刺した爪から、そのまま顎を打ち抜く蹴りを放つ。当たれば顎だけじゃなく頭蓋骨も砕ける。咄嗟に頭を後ろに下げ、そして肩を捻ねり、相手を地面に叩きつけようと投げる。

SNSでこの小説を紹介

アクションの他のリレー小説

こちらから小説を探す