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lost/bombs
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lost/bombs 117

叩きつける寸前、右頬に衝撃。軽いが歯がへし折れ、視界が揺らぎ、力が一瞬抜ける。地面に叩きつけた肘が大地にクレーターを作る前には人影――いや、幼いソレは逃れていた。
羽のように軽やかに着地し、解けたローブの間から長い髪が靡く。
「誰だ?」
「(私、僕)が名を言っても君には届かない。それは酷く悲しい、だから自己紹介は言わない」
「?」
雄太の体が陽炎のように揺らぎ、高速で放たれた灼熱の拳が彼女/彼の顔面に叩き込まれる。轟音が響き、しかし、その音は風をぶち抜き、衝撃波が向こう側のビルを崩した音だった。残像が不気味に笑い、空間構成変換術式機構≪アインス・フェイエル≫が限定領域に起動。穿たれた空の破片が三千以上の劣化ウラン弾となって雄太に向って降り注ぐ。
「意味がわからん」
雄太は三千以上の劣化ウランの雨。
準戦略級の爆撃を前にして、指先で側にあった落葉を拾い、≪生命の系統樹を遡り進化する能力・ユグゼラシエル≫を発動、僅かな落葉は、通常の何億倍の速度で成長し、音速の二倍を誇る劣化ウラン弾全部を受け止め、更に栄養にして爆発的に成長する。枝葉は全て刃に匹敵する鋭利さ、蔓は相手の胴体を絞め殺す拷問具となり、花は獲物の栄養を搾り取る食人花となって襲いかかる。
「わからなくていいよ」
小柄な人影は再び指を鳴らす。
急激に成長していた草木が割れた空が振り下ろされた巨大な、いや、巨大と言う言葉すらもばかばかしい全長六十キロ、幅、一キロのギロチンによって切り落とされた。砕かれた草木は瞬時に獣――植物と生物の系統である草獣となって襲い掛かるが、ギロチンが砕けた刃の雨の前に粉微塵となって砕け散る。
「馬鹿は死んでも治らない」

小柄な人影は≪アインス・フェイエル≫の起動を最大顕現させる。人影の後ろに巨大な機械仕掛けの大時計と無数の指針が生まれ、その間には幾多のゼンマイとネジが絡み合い、生物のように蠢いていた。時計の動きが早くなり、人影の体が軋みながら成長、その姿を人から獣、獣から神、神から無、そして人へと高速輪廻転生をさせる。男から女、女から男、何重にも進化する彼/彼女の前で雄太は無くした左腕の断面をなでる。

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