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lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

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lost/bombs 109

銀髪の機械と赤毛の負け犬は空を見る。近くから迸る高次元の世界に表面を剥がされ、不恰好な内側が覗く空を。無数の0と1が複雑に絡み合い、瞬時に分裂し、更に増殖、最初に刻まれた言葉通りに動く世界に空を見て溜息。
「あ〜あ、結局、この世界を好きになれなかったな」
「悔やむか」
「・・・・・・・・・・・少しな」
「殊勝だな」
「最後だしな。つーか、好きになればどこでもよかったんだよ。嫌いだから反抗した。むかついたから壊そうとした」
「子供だ」
「ああ、否定しねぇ。けど、どうやっても、百年間生きても、誰かを好きになっても愛しても、この世界の嫌悪感だけは拭えない。なら壊すしかなかった。嫌だ嫌だと良いながら従順するだけの生き方はできなかった。弧月の落ちこぼれでも、月の欠片を持つ水月の名にかけて」
永劫は四肢をなくした男が煙草をふかす様子をどこか可笑しげに、どこか楽しげに見つめる。
「製造番号に縛られるなと言ったのはお前だぞ」
「自分に出来ないことでも押し付けちまうんだよ。人って奴は。禁煙とかな」
「妹さんが困るぞ」
「困らねぇよ」
煙草を噛み締めながら骸は空を見上げる。
「クラゲがお月様の心配をするなんて馬鹿馬鹿しいにも程があるだろ」


その頃、建物の屋上を駆けながら朧は全身を締め付けるような強大な世界感に必死に抵抗していた。
抵抗する為に展開した世界は朧の周囲を球体上に歪ませる。異様な光景だったが、それを見て驚く人はいないだろう。それは異貌憑きであろうと獣人体や進化者でも。
「死と死の激突の余波が全てを汚染しやがってる。タチが悪い」
屋上をかける朧の隣で、時折、現れる壱虎は忌々しく呟く。常時展開に向いてない朧は虎歩の能力を触れる空気に発動させ、一秒間に汚染された空気を別の世界から持ってきていた。陽炎のように揺らぐ姿だが、先程の黄泉の神との戦いの際に進化しなければ不可能だった。

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