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lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

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lost/bombs 105

頭蓋を切り裂くように闇の中から飛び出してきたのは一虎。身体に絡みつく黒い触手を引き千切りながら不敵な嫌味を漏らす。
「きたない世界だな」
虎歩による精神世界への侵入し、内部からの攻撃。彼女にも絶対必殺の攻撃があった。そして朧にも。
「どけ、馬鹿猫!」
地上で爛々と蒼い瞳を輝かせる朧が吼える。今まで必死に魔眼へと世界を注いできた。蒼い瞳から零れ落ちる光が涙のように滴り、限界を超える。
「くらえ!!!」
最大規模に魔眼の範囲が広がる。切り裂かれた頭を再生させる死神は動けず、魔眼の力が解放される。極大の凍気が死神を中心にした半径一キロの全てを凍結させる。
周りに漂う雲が一瞬で霧散し、地面から昇る大樹や建物が切り取られたように凍りつき、そこから砕け散る。
朧の瞳は爛々と蒼く輝き、膨大な冷気は全てを凍りつかせようと吼える。範囲から離れた壱虎の身体も余波の冷気で霜が走るほどの氷の蹂躙だった。
星が持つ太古の時代、全てが凍りつく地獄が顕現した。
「神を舐めるな!」
それを神が持つことができる巨大な世界で抵抗する。
彼女の身体から吹き上がる漆黒の炎。憎悪と呪詛が混じった万の呪言が世界を凍らせ壊死させる氷と激突。お互いの死が激突する境界線を作り出す。
「ガガアアアアアアアッ!!」
「ギギギイイイイオオオオッ!!」
二人の咆哮が現実の世界を軋ませ、壱虎は右の拳に虎歩の力を込める。彼女の全身の毛が逆立ち、長い虎髪が跳ねるように量を増す。
「神様の癖に往生際が悪いッ!」
壱虎の拳が消え、死の世界を飛び越え、死の女神の頬を殴りつける。世界の放出に全神経を研ぎ澄ませていた彼女は思いっきり顔がぶれ、その瞬間、凍気の波動が全方位から襲いかかる。
指先から世界が凍りつき、微粒子なって砕け散る様子を眺める中で、深紅の紐が彼女の首を切り取った。





猫は佇む。縦に長い琥珀の瞳で地面にのたうつ雄太の姿を見る。全身から吹き上がる湯気は細胞が高速で再生されることによる熱量だ。その指先は触れようか、揺れまいかと戸惑うように揺れ、しかし、やがて服の中に納まり、じっと見るだけに成る。
「・・・・・兄、か」
この感情は自分の物じゃないとわかっていても、どうしようもなく惹かれてしまう。彼の魂の妹の欠片、そして本当の妹の肉片から作られた私は偽者だ。

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