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lost/bombs
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lost/bombs 103

空に浮かぶ黒衣の美女が囁く。
その姿を見た瞬間、朧と壱虎の背筋が恐怖で震えた。生き物としての恐怖であり、過去の神話から来る震えだ。
「さてと・・・・」
美女が両手に漆黒の灯火を飛ばす。炎はある程度に跳んだ後、虚空で止まる。轟々と燃え盛る炎は何かを燃やすというよりも何もかもを虚無へと飲み込む漆黒の穴に見えた。
「このままではどうも調子が出ないわね。さっさと欠片を見つけないと」
二つの炎の間にあった空気、重力、物質が食われる。引き起こされるのは相反する引力に引き千切られる現象だ。
瓦礫が引きずり込まれ、左右からの超引力に身を引き千切られ微細な塵と化す。
「っ!」
「見境なしか」
身体が引きずり込まれそうになるのを必死に耐える朧と壱虎は彼女を敵だと認定する。
その視線に気付いたのか、闇夜の彼女も喰らう漆黒の灯火を消し、二人へと顔を向ける。
壱虎が虎歩で転移して、その顔面へと拳を叩き込む。
渾身の一撃、相手は防御してない。ならば頭蓋骨は粉砕したと確信した壱虎は相手の赤玉の瞳を見て震える。いつの間にか、黒から赤へと、安寧たる夜ではなく鮮血の黄昏へと変わった瞳に灯るのは哀れな害虫に対する侮蔑。
「欠片と思ったけど、ただの獣ですか」
漆黒の灯火を宿した指先が壱虎の心臓へと走る。防御ごと喰らう最強の魔指の前に虎歩を使おうとするが世界を削られた為に起動が遅い。
右腕を犠牲にして時間を稼ごうとした壱虎の前で、闇夜の彼女の顔面へと凍気を纏った拳が打ち付けられる。痛みは無いのだろうが、視界を遮られたことで漆黒の指が外れる。その瞬間、壱虎と朧のラッシュが放たれた。
爪や拳、蹴りや肘、互いに獣人体であり進化者の怒濤の攻撃を殆ど頭部に受けながら彼女は微動だにしない。
「凍る鎖っ!!」
朧の両手の指より伸びる十本の氷の鎖が彼女の身体を伽藍締めにし、しかし、漆黒の炎に食われるように消滅する。
「邪魔」
赤玉の瞳が二人を捉える。その瞬間、地面から物凄い勢いで白い樹木が伸びる。まるで先程の朧が放った氷の樹木のように空中にいる二人へと鋭い枝を伸ばす。

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