PiPi's World 投稿小説

lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

の最初へ
 100
 102
の最後へ

lost/bombs 102

虎歩の瞬間移動には手順があり、その中に自分を中心とした世界の構築がある。それはイメージ上の模範であり、実際には何の防壁にも何の意味も無い。ただ漠然とした世界の構築な為、あらゆる攻撃も無意味なはずだった。それなのに魔眼はあっさりと壱虎の世界に侵食した。世界を削られた壱虎はそれだけ常人に近づく。
ヤバイな、と思いながらもやはりどこかで楽しむ自分を感じて壱虎は納得する。自分は虎以外にはなれないと。
「今度はこっちから往く」
「ッ!」
虎歩ではなく普通の―――それでも常人の異貌憑きを超える速度で壱虎は朧に切り込む。左右の拳がまるで餓えた獣の牙の如く、連撃で朧に放たれ、彼女は精一杯に防ごうとするが、魔眼の疲労で一、二発をまともに受けてしまう。小柄な身体が吹き飛ばされ、しかし、辛うじて着地した朧は口端から零れた血を裾で拭い、吼える。
「弧月を舐めるな!!」
突進してきた壱虎の胴体に突き刺さるような前蹴りが入り、吹き飛ばされる。カウンターで入った衝撃は臓腑を駆け巡り、喉奥から嘔吐を促すが、それを必死で飲み干す。そこへ氷槍の掃射が放たれ、彼女は虎歩を使って躱すが連続使用まで出来ず、間合が広けた。
互いに満身創痍とも言っていいほどの傷を負いながら互いに敵意は止まらないどころか、更に膨れ上がる。
十三歳でこれ。大人の化物がどれほどのものになるかは押して知るべしである。
朧の背後で劫火が噴き上げ、火山の噴火のように焼けた岩を飛ばしてくる。それでも二人の少女の視線は互いから微塵も動かない。
しかし、だが、しかし、全長一キロはありそうな巨大な炎の怪物が堕ちてくれば話しは変わる。
「うあっ!?」
「うきゃあ!?」
歳相応に可愛らしい声をあげる朧と壱虎。その前で炎の怪物は建物を薙ぎ払いながら地面に叩きつけられる。
「炎の属性を辺りに撒き散らし、それを自分の世界を取り込むことで一時的な増強ってのは中々上手いと思うけど、それでも一匹の獣と神様とでは格が違うわ」

SNSでこの小説を紹介

アクションの他のリレー小説

こちらから小説を探す