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lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

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lost/bombs 101

暴れるように身悶え、断末魔の悲鳴さえこれよりも大人しいと思える咆哮をあげる。それを天使の微笑で見ることが出来る美女は、まさに死の女神に相応しい。
「あらあら、可愛い悲鳴をあげちゃって。それで君はどうやって身悶えてくれるのかしら」
美女の視線の前に骸は咆哮をあげる。怯えさせるのではなく己を鼓舞する咆哮に続くように溶岩の津波が彼女へと襲いかかる。彼女は右の掌に漆黒の灯火を宿した。
「この程度じゃ前戯にもならないわよ」
そのくらいは骸もわかっていた。

「よく躱す!」
朧は氷片の散弾≪凍る雨≫が一発も当たらないのみながら視線と嗅覚、そして全体の感覚を研ぎ澄ませて相手を探る。相手はすぐに現れた。朧が佇むビルの入り口から三十メートル上、屋上に近くで不敵な笑みを浮かべている。
「どうした、犬っころ。そんな所にはいつくばって餌でも欲しいのか?」
「お前は発情期の猫か。頭の悪い台詞を吐くな。こっちの脳味噌がどうにかなる」
二人の視線が激突、殺意の火花が散る。朧がビルの側面に手を振れ、凍気を放つ。霜が駆け上がるようにビルの表面を凍らせながら壱虎へと向い、彼女は――― 「甘い甘い」と空を身を投げ出す。
たとえ空中だろうと重力に捕まえる前に虎歩を使えばいいという考えに朧は頷く。
「どちらが甘いのかな?」
霜を走らせていた壁から勢いよく氷の柱が生まれ、その切っ先を重力落下に捕まる寸前、壱虎へと突き立てかける。辛うじて躱すが、そこから分裂した無数の氷の棘に壱虎は目を剥く。
「どうやって」
その視線はビルの側面を走る無数のパイプを見た。
「水道管!」
「正解。賞金は―――」
朧の瞳が爛々と蒼く染まる。膨大な世界の干渉力に大気が軋みながら侵食されていく。支配の端から見る見る間に凍りつく空間を見て壱虎は世界を収束させる。
「氷の世界だ」
半径五百メートル円形状に大気を凍結させ、朧は息をつく。蒼から琥珀へと戻った瞳で片隅の廃材に倒れている壱虎を見た。
「あれだけやって更に魔眼も使って手足の一本も取れないなんて弧月の名が泣く」
「くそっぉ」
地面に倒れた朧が呻きながら立ち上がる。実際の所、彼女は朧が思うほど無傷でもない。全身に走る凍傷によって凍りついた肌が動いたことで斬れ、零れ落ちる鮮血。虎歩の緊急使用によって全身の体力が削られている。
何よりも。
(周囲に展開した世界まで凍りつかせるなんてどれほど強力な魔眼なんだよ!)

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