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天使に牙を、悪魔には涙の唄を、
その他リレー小説 - アクション

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天使に牙を、悪魔には涙の唄を、 5

「そんなのはしってんだよ!」
その時ほど“人間をやっている”と思った瞬間はなかっただろう。
嫌いな生物の中に入れられ、自分の憧れる人物のことを拳で語り合う。
その日は、学校が終るまで殴り合い、ボロボロになり、夕日が沈むまで不良の溜り場に行きうさばらしに喧嘩をした。
少しだけ、人間が大好きになった。

・・・・・・・・・・・・
そして、魔の時間帯がやってきた。
夕日が完全に沈み、明かりの無いところでは完全な漆黒が、辺りを包み込む。

上着のポケットから振動が伝わる。携帯だ。
天使が何故携帯?っと思われるかも知れないが、この形はとても便利なのだ。正確には携帯ではなく、携帯の形をした、テレパシーの増幅機関であるが。

・・・・・・・・・・・・
「指令を了解した」
今回の仕事も前回と同じ、みせしめの暗殺。
数時間後には、漆黒のスーツを着た天使が闇夜を駆け、銃弾を放ち二つの命を奪い取っていた。

 廃ビルの屋上で直斗は体内に入った埃を押し出すように息をつく。
 月が赤い。
 比喩などではなく、文字通り赤い。
 今日の夜は、一悶着ありそうだ。
 直斗の考えは的中していた。
 屋上の、入り口の影が歪むと一人の男が影から姿を現す。
 「誰だ!」
 殺意のこもった低い声と、今まで何体もの悪魔と人間の命を奪った銃口が向けられる。
 「バレちゃいましたかー」
 出てきたのは普通にしていれば二枚目でもてそうな青年だった。
 今、この姿を太悟と瞳に見せたらどんな顔をするだろう。
 姿を見せたら、ついでに全部説明してやろう。
 俺がどんな使命を持って生まれ、どんなことをしているか。
 三人の関係を壊したくない。そう思った。
 守るものができた。・・・・・・と。

 結果から言おう。
 俺の目の前に出てきた男。こいつは敵だ。
 名を蛭児 慶次(ひるこ けいじ)と名乗った。直感が働く、こいつは悪魔だと。

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