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子守唄を添えて…
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子守唄を添えて… 6

「透…どうしてその女の子まで殺したの?」
「うるさかったからね〜…♪」
「そう…」
凛さんはゆっくり剣を抜き、切っ先を真壁透の鼻先に向けた。
「透…今すぐどこかに消えてちょうだい…じゃないと私…貴方を殺すわ…」
透は顔を歪ませた。
「凛がそういうなら仕方ないなぁ〜…♪じゃあ…また♪凛と凛の召使い君」
透は音も無く、姿を消した。
凛さんは剣を鞘に入れ、殺された女の子を見た。
見るに堪えない状態だった。女の子のお腹からは血がドクドクと出て、心臓だけが…綺麗に取り出されていた。
その瞳は父の姿が焼き付いたのか、それとも驚きのせいか、開いたままになっている。
凛さんはそっと女の子の顔に手を触れ、瞼を閉じさせた。
「ごめんね…」
その夜は…死者へと贈られる鎮魂歌が静かに響いた。

「お父…さん…?」
真っ赤。
「お母…さん…?」
綺麗な真っ赤。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ………!!!!!」
真っ赤じゃなかったら…よかったのに…。

「…はぁ…はぁ…はぁ…重症ね…」
今夜はよく眠れない。
夢が寝かせてくれない。
寝ては同じ悪夢を繰り返す。
今ので3回目。
昔にできたトラウマは…私を締め付けて離さない。
「はぁ…はぁ……ふぅ…」
私服に着替えて私は家から出た。きっとハクちゃんはまだ寝てるだろうから起こさないでおく。
いつもの広場に来る。
何も無く、人気も無い広場。
小さい街灯だけが付いていて、それもバチバチと消えたり付いたりしている。
さっき雲で薄く隠れていた月も完全に見えなくなって、この点滅する街灯だけが頼りだった。
私はゆっくり剣を抜く。
この子を握っている時だけは…忘れられる。
忌々しくて…悲しい…過去を。
暗闇の中、風を切る音が聞こえる。
あの夢が酷い夜には必ずここに来て、鍛練をする。この子が私の闇を切り裂いてくれるような気がするから。
「………馬鹿ね…」
自分の悪態を吐く。
「こんなことしても…」
闇は晴れないのに。
「でも…辛そうッスよ?」
「え…?」
煙草の煙をフーッと吐きながらハクちゃんは歩いて来た。
「極力、単独行動はしないで欲しいッス」
彼の額の汗と、一服の煙草を見れば私を探し回っていたことが予想できた。
「一応、パートナーですから。凛さんなら大丈夫だと思いますけど…それなりに心配ッス」
そんなことをハクちゃんは普通に言った。
「…私にも一人になりたい時があるのよ」
…そうッスか、と言いながら彼は自分専用のなまくら剣を抜いた。
「お手合わせ…お願いします」
彼がどうゆう真意で言ったのかは分からない。でもその瞳は暗くても真剣に見えた。
「…いいわ。いつでも来なさい。こてんぱんにしてあげるから」
彼は煙草を投げた。
暗闇の試合が始まった。

彼は姿を消した。
暗闇だから見えない、とかではなく気配が無い。
彼は私と違って、頭が良い。きっと自分の能力とこの状況をフルに活用して勝機を見出だす。

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