PiPi's World 投稿小説

子守唄を添えて…
その他リレー小説 - アクション

の最初へ
 2
 4
の最後へ

子守唄を添えて… 4

不良が凛さんを前から殴ろうとする。そして後ろからも不良の蹴りが凛さんに向かっていた。
そして彼らの攻撃は空を切った…仲間の呻き声と同時に。

攻撃を仕掛けた不良の二人は唖然とする。さっきまで彼女はすぐそこにいて、二人同時に攻撃をした時には勝利を確信していた。
しかし彼女は忽然と姿を消した。今まで見ていたものが錯覚だったのかと思うくらいであった。
同時に追撃を仕掛けようとしていたもう一人の仲間が呻き声を上げながら、倒れてたのを横目で見た。
倒れた仲間の横には彼女がいた。
彼女の手は手刀の形をしていて、倒れた仲間は起きてこない。おそらく気絶したのだろう。
そしてこちらにクルリと向き直った。
「ごめんなさい。手が滑ってしまったわ…?」
もう一人の…さっき蹴りを仕掛けた仲間が彼女の顔に向かって拳を突き出した。
スルリと躱す。
次に仲間は蹴りを仕掛けた。
スルリと躱す。
今度はタックルを仕掛けた。
スルリと躱す。そして仲間は気絶した。
またもや手刀だったのか、さっきと同じ状態だった。
「さ…残りは貴方だけよ…?」
彼女が近付いてくる。
こいつはただの女ではない。
こいつの手は俺らで言うスタンガン。しかもかなり強力なやつだ。
一発気絶。
絶対に戦いたくない相手。
しかし、恐れ多くも…戦いを仕掛けたのはこっちからだった。

相変わらず凛さんは酷かった。
不良相手に『刻止』という体術を使っていた。
刻止…読み方は『こくし』。
その語源は相手の体が瞬時に移動し、まるで刻を止めて移動したかのように見える様からきている。
今、二人の不良は地に顔を付けている。きっと最後の一人もそうなるだろう…。
「さて…降参するなら許してあげるわよ…?」
おそらく嘘である。
不良が降参なんてしないと分かってて聞くのだから、本当に人が悪い。
どうやら不良は覚悟を決めたらしい。
「しねーよ。おらぁぁ…!!」
「そう…残念ね…」
勝負は一瞬で決まった。
まず刻止を使えないものが使えるものに勝てることは無いだろう。
そして、その頃には女の子の表情に不安など無かった。
「ハクちゃん、こいつらお願い♪」
「あー…了解ッス」
不良三人を近くの人目のつかない路地裏まで引き摺って置いた。
「貴女…大丈夫…?」
「は、はいっ!!ありがとうございますっ…!!」
「ここらへんは物騒だから通らないほうがいいわよ…?」
「あ、あの…祖父がここらへんで働いていて…」
「老人がここで一人は危ないわよ?」
「なるほど…では気をつけることにしよう」
いつの間にか凛さんの後ろに老人が立っていた。
「訂正するわ。貴女のおじいちゃんは強いから大丈夫よ」
女の子は意味が分からないのか首をかしげた。
「まさかこの娘の祖父が貴方とは知りませんでした…先生」
「ふむ…孫を助けてもらったようで…礼を言うぞ、凛君」
凛さんが先生と呼ぶ、唯一の人。
陣野忠信。

SNSでこの小説を紹介

アクションの他のリレー小説

こちらから小説を探す