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Private Excution
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Private Excution 8

下から突き上げられた右の鈎爪をいなすとすぐさま首を傾げ、続けざまに繰り出された左をかわす。そして地面と水平に斬撃を繰り出す。男はバックステップでそれをかわし、距離をとる。そして、着地と同時にその反動を利用してバネの様に、刀を振り切った姿勢の蒼依へと再び跳ぶ。
蒼依の長い髪が、流れる。
男の渾身の一撃は空を切り、男に大きな隙が出来る。
銀色の残影が、確かに男の左手を捉える。
しかし、切り裂いたのは男の上着。男は空中で体を捻ると右手を支点にして倒立から見事に着地する。
蒼依が苦笑いを浮かべる。この男、普通ではない。平凡な相手ならば間違いなく左腕が飛んでいたはずだ。修羅場の匂いがプンプンする。
おそらく、男はこういった肉弾戦よりは隠密行動を得意としているはずだ。例えば、暗殺のような。
「まさか、あなたがそっちについてるとはね。矢作総次」
男がにやり、と笑う。矢作 総次(ヤハギ ソウジ )はそちら側の世界では名の知れた暗殺屋。暗殺成功率98.8%というプロフェッショナル。
「光栄だ。《戦刃の黒姫》」
《戦刃の黒姫》、というのは蒼依の二つ名。《枢公院》の七官以上の執行官にはこういったコードネームがつけられている。七官というのは、枢公院で上から四番目の地位にあたる、上級執行官七人の階職名である。
総次がの右手を腰のベルトに伸ばす。そして、その手の平に握られたものを確認すると、蒼依がはっとしたように両手を顔面の前でクロスして飛び退さる。
総次は小形の爆弾を蒼依に向かって放り投げる。爆炎は蒼依のコートを焦がし、黒煙を上げる。それだけの被害で済んだのは、蒼依の咄嗟の判断とコートの防炎加工の技術が優れていたから。まともにくらっていたなら腕ごと消し炭になっていたはずだ。
「地下室で爆薬を使うなんて…!!」
まとわりつく炎を振払い、蒼依が毒づく。
地下室自体には全く影響はなさそうだが──それはそれで、設計技術の高さに驚く──黒煙が充満する。
こういった密閉空間には、バイオハザードに備え、換気設備が調っているはず。
蒼依が手探りでそれらしき装置を探す。
背後から迫る殺意。
咄嗟に横薙ぎの斬撃を繰り出す。硬い感触が返ってくるが、総次の姿は確認できない。
カチ。
適当に探っていた左手が換気扇を作動させたようだ。
けたたましい稼働音とともに、黒煙が晴れていく。
突如、闇色の帳を切り裂き、総次がその姿を現す。
袈裟斬りの一撃に、総次の殺意が滲む。

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