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Private Excution
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Private Excution 6

声は蒼依の右後方から。
 蒼依の細く、白い首筋に、鈎爪の切っ先が食い込む。
 そのまま力を込めていれば、間違いなく頸動脈を切断されていただろう。だが鋼の爪は、薄皮さえも破ることなく止まっていた。
 その元凶は、男の喉元。
白刃が男のちょうど喉仏の辺りで輝いている。あと一歩でも踏み込んでいれば、男の首と身体は離れていたはずだ。
「聞こえないわね」
 およそ地下20メートル。戦乙女の声が、凜と響いた。
扉をくぐり、朔馬が走る。そして間もなく、同じような扉が眼前に姿を現す。

──一閃。

 がたん、という音と同時に、朔馬が突入する。その右手にはいつの間にかあの日本刀が握られている。
 そこは、ただただ広い空間。高さは20メートルはあるだろう。面積も、バスケットコートが2〜3面ほど軽く入りそうなほど。
 見れば、反対側と右手の壁にドアが二つ見える。今度は先程の鋼鉄のものとは違い、普通のドアのようだ。
 とりあえず、正面のドアに向かって走り出そうとした、そのとき。
『ようこそ。《枢公院》の執行官殿』
 そのだだっ広い空間に、まだ若そうだが、高飛車な男の声が響く。
『しかし、ドアの開け方も知らん不躾な客人にはお帰り願おうか』
 マイク越しに、くくく、という笑い声が聞こえる。
 唐突に、右手のドアが開く。出て来たのは、明るい茶髪を背中まで伸ばした、若い女。着ているのは、見覚えのない制服。意外な展開に、朔馬は少し困惑する。
「茶、運んできたメイドってわけじゃないよな…」
 一応警戒しながら、少しずつ女に近づく。
 そして気付く。女の異様さに。

──ガガガっ!!
朔馬が飛び退くと、一瞬前の足場が蜂の巣になる。
 女の手に握られているのはサブマシンガン。H&K社製の名機であるMP5の後継機、MP7のバリエーションの一つ、MP7A1。室内戦向きの消音機能に優れたタイプである。しかも対衝撃処理を施してあるようだ。
「…おいおい…セーラー服となんとやら、ってか?」
 ちなみに、少女が着ているのは灰色のブレザー。
『彼女に、君を丁重に帰すように指示してある。では、健闘を祈る』
「帰らせる奴に健闘を祈る奴がいるか」
 刀を構え、朔馬が毒づく。そして床を蹴る。

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