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Private Excution
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Private Excution 4

「またかぁ?ここんとこ立て続けじゃねぇか」
 それを見た朔馬が、うんざりとしたように言う。
「知らないわよ。あたしが決めてんるじゃないわ」
 頬を膨らませて憤慨する蒼依。大人びた外見とその仕草のギャップがかわいらしい。
 渋々、朔馬が封筒の中身を見る。
「はぁ?ヤクの取引ルートなんで警察にやらせりゃいいじゃねぇか!何だって俺らがやらなきゃなんねぇんだ!」
 読み終わる前に、朔馬がキレる。
「それが、ただのヤクじゃないのよ」
 蒼依が神妙な顔付きになると、朔馬も表情を引き締める。
「…ただのじゃ、ない?」
「新型ドラッグ、《セブンス・ヘブン》。通称S・Hよ。文字通り、覚醒剤らしいわ」
「…文字通り?」
 訝る朔馬に、カフェオレのストローをくわえながら蒼依が頷く。
「S・Hは、人間の秘めた力を引き出す、って言われてるの」
 なるほど、と朔馬が納得する。つまり、本来眠っている隠れた能力を、薬物で無理矢理叩き起こすということだ。確かに、「覚醒」剤だ。
「…ん?ちょっと待て。今回の仕事のランク、C〜Aってどういうことだ?」
 ぽろぽろこぼれるメロンパンの屑を気にしながら朔馬が訪ねると、蒼依は一つため息をつく。
「…面倒な奴らが動いてるらしいのよ」
 まだはっきりしないから、と付け加えて、蒼依はもう一度大きく息を吐き出す。それだけで何事かを悟ったのか、朔馬が露骨に厭そうな顔をする。
「それで、今晩、あの埠頭の調査するから。ま、宜しくネ」
 飲み終わったカフェオレのパックを置き、蒼依が言う。どこかその口調は投げやりだ。
「…超過勤務手当ぐらい出るんだろうな…」
 誰にともなく呟き、朔馬はうんざりとしたように点を仰いだ。
 しかしそこには、無駄に青々とした空が、広がっているだけだった。
深夜。緋烏町外れにある埠頭。貨物船や漁船などが停泊しているすぐ傍の廃倉庫。
「…ホントにここでいいんか?」
 朔馬の呟きが、薄暗闇の中に響く。朔馬は、九月の頭だというのに、薄手とはいえ、黒のロングコートに身を包んでいる。凜、とした印象を与えるそれのせいで、その姿が尚更闇に溶け込んでいる。
「ちょっと待ちなさいよ…あ、あったあった」
 朔馬と同じような服装の蒼依が、手の平の端末を覗き込みながら応える。その端末は成人男性の握り拳よりもやや小さいぐらい。液晶画面には超音波映像が表示されている。
その正体はというと、システムとしては魚群探知器に近い、地下空洞探査装置。
「でもコレ…」
「入口は?」
 眉根を寄せ、不思議そうに首を捻る蒼依を、朔馬が急かす。
「ん…この辺でいいみたい」
 蒼依が足を鳴らして場所を伝えると、朔馬は何も言わず頷く。そして蒼依に離れるよう指示すると、一気に刀を鞘走らせる。
 ピシ、という音の一瞬あとに、床が円形に切り取られる。
「じゃ、ナビは頼んだぞ」

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