PiPi's World 投稿小説

Private Excution
その他リレー小説 - アクション

の最初へ
 21
 23
の最後へ

Private Excution 23

「何だ、よく知っているじゃねぇか」
それに対して薄く笑う朔馬。
「あぁ、知っているとも」
その言葉を紡ぎ終わる前に、二人が弾かれるように刃を離す。
「《竜幻》(りょうげん)の一連のシリーズ中、唯一の失敗作、《月下紫苑》。まさかお前の手にわたっているとはな」
鼻で笑い返す六峰。
《竜幻》というのは、刀匠(と言うには若干の語弊はあるが)の名前であり、ブランド。言わば、正宗や虎鉄と同じだと思えばいい。
「失敗作、か」
朔馬が皮肉めいた笑みを浮かべる。
「そうだ、失敗作だ」
体を沈め、六峰が疾駆する。肉薄する殺意の刃。跳ね上がる切っ先を、朔馬はバックステップでかわす。カウンター気味に繰り出した横薙ぎの斬撃を、六峰は宙を舞うようにかわし、朔馬の背後を取る。
体を反転させた朔馬は、ロクに相手も見ずに刀を振るう。もちろんそれは当たらないが、六峰は後退する。
「はっ、いい反応だ」
狂気じみた笑みのまま繰り出した突きは朔馬に弾かれる。
「戦争の片棒を担いで、何が楽しい!」
その表情に、朔馬が激昂する。
「人聞きの悪いことを言うな。俺達はただ、戦争を早く終わらせる手伝いをするだけさ」
「手伝い、だと?」
六峰は一旦引いた切っ先を再び突き出し、朔馬の頬を削る。
「そうさ。戦争は戦力が拮抗するから長引き、互いに疲弊し、被害が連なる。だから俺達はその力の天秤を傾けるのさ」
「馬鹿言ってんじゃねぇよ!」
地面を蹴って後退した朔馬だが、その着地の反動で飛び、バネのように狂った赤髪の男の元へと舞い戻る。

「そんな結末が、平和だとでも言うつもりか!」
振り下ろされた閃きは首筋へ。しかしそれも六峰のジャケットをわずかに切り裂いただけ。
「そうだ。それで人々は銃弾や核の恐怖から解放される」
「ふざけるな!」
朔馬の斬撃のスピードがわずかに上がり、追撃の刺突は六峰の二の腕を朱く染める。
「そんなこと!支配の恐怖に怯えて眠れぬ夜を過ごす人間を生むだけだ!」
「だったらどうすればいい?世界中が武器を捨てれば、それが平和か?それで全てが終わるのか?──いいや、終わらんよ!」
肩口を切り裂かんとする銀色の一閃をすんでのところでよけ、六峰が叫ぶ。
「一旦武器を捨てたところで、それは一時的なことに過ぎん。いずれ人はまた新たな武器を取る。以前よりも強く、凶悪な武器を!」
「それはお前達が作り出したただの言い訳だ!人間は、本当はもっとうまくやれるはずだ!それをお前らの理屈で、この星の60億人を巻き込むなっ!」
「そんなことは今までの人間の歴史が証明しているだろう!」
ぎん、ぎんという甲高い察過音が真夜中の海辺の広場に響き渡る。そして最初のような二つの銀が交差する。

SNSでこの小説を紹介

アクションの他のリレー小説

こちらから小説を探す