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Private Excution
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Private Excution 20

隙だらけの悠紀の下腹部、皮肉にも悠紀がたった今曜子を刺したのと全く同じ部分を、容赦なく貫く。切っ先が背中から突き出た瞬間、完全に悠紀の動きは止まった。
「…クソっ…どういうことだ…!」
「フン…馬鹿め、自分の身体をよく見てみろ」
曜子に言われて確かめてみる。すると、頬と下腹部の刺傷以外が跡形もなく消えていることに気付く。
「消えて…やがる」
「消えたのではない。最初からないのだ」
不思議がる悠紀に、曜子が言う。
「私の刀の名は《狩魔》。こいつの特殊能力の一つでな。斬りつけた相手の半径5メートルに幻覚を作り出すことができる。つまり、私はお前に幻覚を見せ、隙を伺っていたのだ」
額に珠のような汗をかき、悠紀が歯噛みする。
「さて、殺す前に訊くことがある。…貴様らは、朔馬をどうするつもりだ?」
曜子の鋭い眼光が、悠紀を射ぬく。
「……」
「貴様らの狙いなどはとうに割れている!」
黙って俯く悠紀の喉元に切っ先を押し付ける曜子。それでも悠紀は怯まない。むしろ、口元が僅かに釣り上がっているのを、曜子は気付かなかった。
「──知るかよっ!」
突如、悠紀の体が光に包まれる。
「──っ!この光は…っ!」
白光に曜子の目が灼かれる。
そして光が消えたとき、悠紀の姿は忽然と消えていた。
そう、その光は、朔馬たちが武器の喚び出す際に生じる光と全く同じだったのだ。
「ちっ…奴ら生体転送システムまで完成させていたか…」
武器は原子配列を受信装置に記憶させれば喚び出すことができる。しかし生物は別だ。いくら原子配列をデータ化したところで、『生命』までは複製することはできず、未だ枢公院科学技術局では生体転送の技術は確立されていなかった。
曜子は一つ舌打ちをし、地下の朔馬たちを追った。


朔馬の言葉を堂々と無視し、津宮は畳み掛けるように言葉を浴びせる。
「若い二人に任せるのが不安だからというのもあるでしょう。しかし、実際は?七官補佐の設楽曜子は医者でもある。いざとなれば治療もできる。そして万が一、不安定な御子神朔馬が暴走した場合、露切蒼依と連携して──」
「黙れ!!」
部屋の中に朔馬の怒号が響く。
「どうしてお前がそんなことを知っているかは知らないがな」
朔馬が口角を上げる。
「俺はお前らをブッ倒しに来てんだよ!!」
刹那、六峰の体が吹っ飛ぶ。六峰は壁にもたれて崩れ落ち、朔馬は左の裏拳を振り切った姿勢で静止している。
「さぁ、ちづるは返してもらうぜ」
朔馬は、凶々しいほどの笑みを浮かべて、呟いた。

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