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Private Excution
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Private Excution 19

「単刀直入に言いましょう。御子神朔馬君、《ベルセルク》に入社する気はありませんか?」
「…何?」
津宮の意図が解らず、困惑する朔馬。
「我々はあなたの戦闘能力は高く買っています。何人かと我々の刺客もあなたに殺されていますが、そのことは水に流しましょう」
「ふざけたことをぬかすな!」
「体の調子は、如何ですか?」
津宮の声が、鋭くなる。切っ先を喉元に突き付けられたように、朔馬が言葉を失う。
「──何の話だ」
「この関東地区に七官が二人、さらには手練の七官補佐までが常駐しているのは何故ですか?」
「伊川悠紀、と言ったか」
曜子は腕組みをしたまま佇んでいる。
「何だ」
「刃を納めては、くれないのか?」
眼鏡の奥で、曜子の瞳がわずかに揺れている。一方の悠紀は曜子の意図がわからず、眉根を寄せる。
「訳のわからないことをぬかすな」
「わからないことではあるまい」
曜子の口調には、どこか有無を言わせぬ響きがあった。
「お前はまだ若い。いくらでもやり直しはきくだろう?自主しろとは言わん。刃を引いて身を隠すことだって出来るだろう?」
「──随分と上からものを言うじゃねぇか」
諭すような曜子の言葉が癇に触ったのか、こめかみに青筋を立てながら悠紀が刀を抜く。
「そういうことは俺に勝ってから言うんだな」
「──どうしても、か」
「くどいな」
もはや悠紀に聞く耳は無い。
「ならば…致し方あるまい」
左手で、空を掴む。曜子は召喚された日本刀の柄を握り、一瞬だけ躊躇う(ためらう)そぶりを見せたが、それを振り払うかのように、一気に刀を鞘走らせた。
「──先に言っておくことがある」
「聞こえねぇなっ!」
悠紀が一瞬で距離を詰める。横薙ぎの一振りを曜子は刃を立てて受け止める。
「私が刀を抜くときは──」
曜子が、刀を振り払う。悠紀は後ろに飛んで衝撃を緩和する。
「相手を殺すと決めたときだ」
声は悠紀の左手から。
切っ先は悠紀の金髪を切り取り、更に猛追する。
跳ね上がる刃は悠紀の頬を掠め、続けざまに袈裟掛けの斬撃が悠紀のジャケットをずっぱりと斜めに切り裂く。が、どちらも浅い。
──迅い。
悠紀の焦燥が雫となって額を伝う。曜子の攻撃を見切りきれないのだ。
それでも何とか上段からの剣撃を凌ぎ、反撃に移る。
必殺のタイミングのカウンターは、確かに曜子の胸を切り裂いた。曜子の双丘の間から鮮血が飛ぶのを視認する。
しかし、背後からの圧迫感に反射的に身体を投げ出す。
銀色の刃は悠紀の背中を十字に切り裂く。悠紀は愕然としながらも身体を捻りつつ体を起き上がらせる。
振り向いたその先には、無傷の曜子が刀を振り上げていた。その正面の女の下腹部めがけて切っ先を刺し込む。確かな手応え。しかし。
その眼の前で、傷ついた曜子の姿が霞んでいく。まるで蜃気楼の様に。
我が眼を疑い、一瞬動きが止まる。それを、曜子は逃さなかった。

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