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Private Excution
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Private Excution 18

遊馬がドアを指差す。流石に朔馬も一瞬躊躇ったが、すぐに覚悟を決めると黒い風と化し、瞬く間に扉まで辿り着いた。そこで一度振り返ったが、やがてすぐに姿を消した。
「おーい、聞こえてっか?すけこまし。…まぁ、どっちでもいいか」
遊馬は無造作に刀を喚び出す。しかし、その形状は、朔馬や蒼依たちの違い、柄こそ日本刀のそれではあるが、鍔から先は青竜刀の刀身をしていた。
「こんなおもちゃで俺を止めれるとでも思ったか?」
「ほぅ?」
やはり聞こえていたようで、遊馬の声に反応して興味深そうな声が落ちて来る。
「枢密公安特務院四伯、遊馬  瑞仙(アスマ  ズイセン)、俺は、お前らを根こそぎひっとらえに来たんだぜ?」
遊馬は不敵な笑みを浮かべると、ゆっくりと切っ先を目の前の巨大な機械人形へ向けた。


階段を、一気に駆け登りると、やがて大きなドアと相対した。無駄に豪奢なつくりのそれを蹴飛ばすと意外に簡単に蝶番が吹っ飛ぶ。
その先には、野球場の内野よりも少し狭いぐらいの空間。壁際には所狭しと計器が並び、ディスプレイには心電図のようなグラフが絶えず変化していた。
その部屋の中央に、機械仕掛けの椅子に座らされたちづるの姿。ちづるは気を失っているのか、俯いてぐったりとしている。
「おやおや、やはりドアの開け方もしらないようですね」
気付くのが遅れたが、ちづるの右にはグレーのスーツで痩身を包み、眼鏡をかけた神経質そうな男が立っていた。
「どうせ経費で落とすんだろ」
朔馬が鼻で笑う。
「図に乗るな、小僧」
ちづるの左から一歩踏み出したのは、深紅の髪を肩まで伸ばし、腰から日本刀を提げた長身の男。外見的特徴が、蒼依の証言と一致する。
「フン…人掠いが大きく出たもんだな」
「勘違いしないで下さい。彼女は元々我々が身柄を預かっていたんです。それを、いきなり来て連れ去った方に言われたくはありませんな」
眼鏡の男は侮蔑に満ちた視線で朔馬を見下ろす。慇懃無礼とはこのことだ。
「ジ○リの悪役面は黙ってろ。人はゴミじゃねぇんだよ」
朔馬が殺意の眼差しで男を刺す。男の動揺が、手に取るようにわかる。
「図に乗るなと言ったのが、聞こえなかったか?」
肩越しに声が刺さる。
椅子の左には誰もいない。
「ああ、やっと聞こえたよ。耳が遠くてな」
おどけてみる朔馬のこめかみから一筋の汗が零れ落ちる。
全く気付かなかった。気配も、感じなかった。
「六峰。粗相ですよ」
男がほっとしたように言葉を吐き出す。
「何だよ…あんたが六峰 東次(ロクミネ トウジ)か」
朔馬が薄く笑う。EからSまである犯罪者のランクにおいて、六峰はA級の肩書きを持ち、各国のブラックリストには必ず名前が記載されているような人物だ。
「津宮、俺はこいつを斬ればいいんだろう?さっさと終わらせたいんだが」
「まぁ、そう言わずに。私の立場もありますから」
そう言うと、津宮は眼鏡をくいっと上げる。

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