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Private Excution
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Private Excution 17

曜子はいつもの高圧的態度を崩さない。むしろ、昼間の白衣から今の漆黒の装いに変わったことでより一層女王様度が上がっている気がする。
「フン…面白い女だ」
男は、すらりと鞘から刀を抜く。
「ほれ、行くぞ」
遊馬が朔馬のコートの袖を引っ張る。
「いや、でも…」
「早く行かんか!」
躊躇う朔馬を曜子が一喝する。朔馬は一瞬体をびくりと震わせたが、すぐに顔を引き締め、遊馬の後を追って男の傍らを走り去って行った。
「…女、名前は何という?」
「無粋な奴だな。女に名前を聞くときは、自分から名乗るのが礼儀だろう?」
「失敬」
くくく、と男が笑う。
「伊川  悠紀(イガワ  ユキ)だ」
「ユキちゃんか、可愛い名だな」
「黙れ!」
笑う曜子に、悠紀がムキになって言い返す。顔が若干赤いところから見ると、どうやら気にしていたようだ。
「失敬」
曜子の口調はどこか皮肉っぽい。
「設楽曜子だ」
そう言って、曜子は笑いを噛み殺した。


「…ねぇ遊馬隊長?」
階段を駆け降りながら、朔馬が訊く。
「曜子姉、一人で大丈夫なんスか?」
「馬鹿言ってんじゃねぇよ。曜子はな、昔、楓さんと引き分けたことだってあるんだぞ」
楓、というのは枢公院の統括官、つまりは、総帥の次に高い地位にいる人物のこと。枢公院の階級は基本的には単純に実力順になっているから、曜子の能力の高さが伺える。けれど、同時に疑問もよぎる。
「え?いや、でも曜子姉って七官補佐…?」
「それにもちゃんと理由があってな」
遊馬の言葉がと同時に、階段が途切れる。昨夜蒼依が総次と激闘を繰り広げたフロアを抜け、廊下を駆ける。
「理由、って何スか?」
「それは…」
朔馬が叩き斬ったドアを跨ぎ、大ホールに出たところで、遊馬は言葉を切る。
「…帰ったら教えてやる」
目の前には、全長5メートルはあろうかという、巨大な機械人形。異様に腕が長く、先程の量産機と同様、人口筋肉で覆われているが、太さは比較にならない。頭部も、カメラアイが二基、まるで紅い両目で睨まれているような、そんな気がする。
「こんばんわ、執行官殿。おや?今日はお一人ではないのですか?」
昨日と同じ声が天井から降ってくる。相変わらず癇に触る喋り方だ、と朔馬は思う。
「ちづるはどこだ?」
低い、ドスのきいた声で朔馬が訊く。
「彼女に逢いたいのですか?それでしたらほら、その正面の扉からどうぞ。ただし──」
正面のロボットが腕を振り上げる。剛腕は、その巨大さからは見当もつかないスピードで、二人に向かってくる。
それを跳躍してかわすと、一瞬前までの足元にクレーターが出来る。
「そこの『ラングアーミッヒ』を倒してからですがね」
マイク越しに、噛み殺した笑い声が聞こえる。
「構うこたねぇよ、ホレ、さっさと行け」

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