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Private Excution
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Private Excution 16

背後から突き出された鋼の腕は後ろも見ずに刀を振るって叩き斬る。そのまま身を屈めると、刃と化した人形の指が剛風とともに朔馬の黒髪を数センチ切り取っていく。跳ね上げた刀身で斬りつけてきた人形の首を刈り、地面を蹴って跳躍する。大上段の一撃は、片腕を失った人形の頭頂から股間までをばっさりと切り裂く。
二つに割れる人形の向こうに更にもう一体を視認する。

赤光が、輝く。

頭部から放たれたレーザーは、咄嗟に身を投げ出した朔馬のコートを焦がし、後方の人形を両断する。まともに喰らえば、ちょっとシャレにならない。
人形の動きが止まる。連射可能な設計ではないようだ。
その僅か数秒の隙を突き、一気に距離を縮めると頭と胴体の接続部分を断ち切る。
後ろにいた人形は腹のあたりで真っ二つになって転がっている。残りは一体。
その生き残りは、意外なスピードで朔馬に肉薄すると、膨れ上がった腕を振り下ろす。
この人形の人工筋肉は、頭部の中枢電脳の命令で自在にその太さを変えることができる。もちろん、太ければ太いほどその力は強い。
朔馬は刀身に左手を添え、剛腕を受け止める。流石に、昨夜のちづるの蹴りとは段違いの荷重がのしかかる。
一つ舌打ちし、腕を床へと受け流す。慣性により前につんのめる人形の右腕を斬り落とし、その背中を蹴りつける。
完全に床に倒れ臥した人形の背中に乗り、刃を首に突き立てると、それきり人形は沈黙する。
「フン…茶番か」
吐き捨て、納刀すると、朔馬は入口へ駆け出す。

足が、止まる。

「人形七体相手に息一つ切らさないとは、やはり流石と言うべきか、執行官殿?」
蟻の巣の前に立っているのは、働き蟻などではない。例えるなら、それは螳螂(かまきり)。何者をも斬り伏せる、狩人の威圧感だった。
「金髪…お前がちづるを連れてったんだな?」
腰から日本刀を提げた金髪の男は、蒼依の証言と一致する。
「ちづる…?ああ、あの女か。実験体に名前があったんだな」
「貴様…っ!!」
思わず絶叫する朔馬。
「落ち着けよ」
穏やかで、涼やかな声が、朔馬の背中に降り懸かった。


「落ち着けよ」
朔馬がそこを振り返ると、そこには朔馬と同じ黒のコートに身を包んだ男女二人。
「全く…乗り込むのは準備が調ってからだと言っただろう?」
「曜子姉、それに…遊馬隊長…」
突然の援軍に、朔馬は驚きを隠せない。
「久しぶりに部下に会えると思えばこれだ。本当にお前は手がかかる」
苦笑いし、遊馬はぽんと朔馬の肩を叩く。短めの黒髪の、前髪の合間から眉間に刻まれた刀傷が覗く。厭なことでも思い出したのだろうか、朔馬が眉をひそめる。
「遊馬、朔馬を連れて先に行っててくれ」
曜子が床に開いた穴を指す。
「ナメられたものだ」
それまで朔馬たちのやりとりを静観していた金髪の男が鼻で笑う。
「ならばさっさと私を倒せばよかろう?」

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