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Private Excution
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Private Excution 15

「主語がないぞ。何を、守れなかったんだ?」
そう訊く朔馬も、既におおよその予想はついている。
「ちづるちゃん、連れて行かれちゃった…」
甘かった。つくづく、そう思った。よく考えれば、奴らが実験体であるちづるを取り戻そうとするのは当然といえば当然である。
「ベルセルクだな?」
「二人組だった。と、真っ赤な髪の奴ともう一人は金髪、二人とも刀持ってた」
朔馬の質問に蒼依は答えないが、それだけで理解はできる。
「わかった。お前は曜子姉に連絡とれ」
「…朔馬は?」
「曜子姉には先に行くとだけ言っといてくれ」
そこまで言うと、朔馬は一方的に電話を切った。余計なことを言われないように。しかし蒼依も朔馬の考えを理解しているようで、かけ直してくることは無かった。
「…俺は一体いつ寝ればいいんだよ」
朔馬は、辟易しながら呟いた。


風が、強い。
朔馬は、三晩連続で、緋烏第三埠頭に足を運んでいた。漆黒のコートをはためかせ、廃倉庫へと足を踏み入れる。幸い、昨晩朔馬が作った入口はそのままだ。
コツコツと、湿った室内に足音が響く。しかし、足音に雑じり、その場に不釣り合いな機械の駆動音がこだまする。
「蟻の巣かよ」
朔馬の呟きは的を得ていた。入口から、無骨なロボットが次々と這い出してきたのだ。その数は合計七体。昨日斬り伏せたロボットとは少し仕様が異なり、その人形の大きさは昨日のそれより一回り大きい。角ばった胴体から生えだした四肢は人工筋肉であろう細い針金のような物質で覆われ、バスケットボールほどの大きさの頭部からは、紅い眼が朔馬を睨んでいた。昨夜のタイプの後継機といったところか。
刀を取り出し、右手に握る。
以前、説明しそびれたが、これは何も無いところから武器を取り出しているように見えるが、実はそうではない。朔馬の右手の中指にはめられた銀色の指輪が、そのトリックのタネだ。
まず、各武器(別に武器でなくてもよいが)の原子配列をパターン化、信号化し、そのデータを指輪の超小形コンピュータにインストールするのだ。それを、指輪で喚び出す。つまり、指輪は小形の転送装置、といったところか。
鯉口を切り、すらりと愛刀を抜き放つ。銀色の刃は、闇の中に一条の光を放つ。
重心を落とし、手近な一体に肉薄する。差し出された切っ先は、正確にカメラアイを刺し貫く。そして強引に腕を刀ごと捻り、頭部をねじ切る。糸の切れたマリオネットのように崩れる人形を蹴り飛ばし、刀に刺さったままの頭部を遠心力で飛ばす。充分な速度を備えたそれは、見事に別の人形に頭突きし、互いに爆砕する。

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