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Private Excution
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Private Excution 12

「…聞きたいことが山ほどあるんですけど…」
「こっちにもな」
ガラリ、と戸を開いたのは、20代半ばほどの女性。白衣と釣り上がった眼鏡が印象的。
「曜子先生、そんなに冷たく当たらなくたって…」
設楽 曜子(シタラ ヨウコ)は緋烏第一高校専任養護教諭。ちなみに、好きな言葉は《堅忍不抜》。
「冷たく当たったつもりはない。だが、そう聞こえたなら謝ろう」
外見からはどうしても厳しい印象を受けるが、割と心配りのできる人間なのである。
「まず…何から言っていいのかな…」
困ったように頬をかく蒼依。
「枢公院ってのはな、正式名称は《枢密公安特務執行院》、つって、簡単に言えば治安維持組織だ」
ノートパソコンを弄りつつ、朔馬が答える。
「更にわからやすく言えば、悪い奴らをやっつけるんだよ」
「…警察とは違うんですか?」
「警察はすぐ死ぬからな」
少女の質問に曜子がやはり冷たく言い放つ。
「近年、科学技術の向上で普通の警察じゃ対応できないような事件が多発してるの。それを何とかするのが私たち執行官の仕事なの」
慌ててフォローする蒼依の説明で納得したのか、しないのか、少女は眉間に皴を寄せている。
「そろそろ自分のことも話したらどうだ?」
急かすような曜子。言われてみれば、朔馬達いまだには少女の名前すら知らない。
「あたしの名前は…及川  ちづる(オイカワ チヅル)。『ちづる』は全部平仮名です」
まだ少女の口調は少し硬い。
「じゃあ…今度はあたし達の番ね。あたしは露切蒼依。で、あっちの男が御子神朔馬。二人とも高2の17歳だよ」
蒼依は努めて柔らかい言葉で説明する。それはもちろん、ちづるの警戒心を解くためだ。
「17って…あたしと同じじゃない…」
「そして私は25歳の養護教諭の設楽だが、何か?」
曜子が怒っているようなのは、若い3人に少しだけ嫉妬しているのかも知れない。若干ちづるも引き気味だ。
「曜子姉…びびらしちゃダメだろ…」
マウスを操作しながら、朔馬が半笑いで言う。曜子の意外な一面を垣間見たせいだろう。
しかし、その笑いが、消える。

──ずびしっ!

パソコンに顔を突っ伏して、朔馬が悶える。
曜子が白衣のポケットから体温計を引抜き、投擲したのだ。弾丸と化した体温計は、まさに目にも止まらぬ早さで朔馬の額に命中した。
「学校では先生と呼ぶように言ってあるはずだろう」
怖い。蒼依でさえそう思う。たかだか照れ隠しで殺されかけたのではたまったものではない。
「す、すいません…設楽先せ…」

──ドゴッ!

次に朔馬をとらえたのは硬式野球ボールだった。下手すれば死んでいる。…何故野球ボール?それは誰にもわからない。
「私は『曜子先生』と呼ぶように言ってあるはずだ。教師と生徒が名前で呼び合う、この背徳感が理解出来んのか。下衆め」
バカだ。この女どうしようもなくバカだ。そう心の中で叫びながら、朔馬は意識を失った。

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