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Dandelion
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Dandelion 7


「何って、後輩だよ。園芸部の大事な後継者」
「バカを言え。お前らは、後進を育てる立場ではあるまい」
「お前、それは誤解ってもんだぜ」

火嘉は笑いまじりの口調で応じた。

「見込みのある新人は、人任せにしないで育てていかねえと。俺らが卒業してからも、部はずっと続くんだからな」
「ずっと続く、か」
「そう」

形村は、くっ、と喉を鳴らして笑った。

「じゃあ、おれは、こいつに斬られても仕方ないな」
「…そういうこったな」

火嘉の、つぶやきのような肯定が合図となった。
一瞬の出来事だった。

隙のない低い中段で、形村は突進してきた。速い。
顔面にまっすぐ突きつけられた切っ先から、神崎は目を離さなかった。振り上げる瞬間を脇からとらえ、左下に捌く。そのまま刃を返して右足を大きく踏み込む。
脇を走り抜けざま彼は、渾身の力で形村の首を斬り飛ばした。

潰れるような音とともに、首がアスファルトに転がり落ちる。
一呼吸遅れてどさりと、形村の体も倒れた。

ハア、と神崎は深く息をついた。
真正面からの立ち合いは、誰が相手でも集中力を要求される。動作自体は一秒に満たなくとも、心拍数は倍も跳ね上がっていた。

不意に、前ぶれもなく背後に気配を感じた。
彼はとっさに前にのめりながら、腕だけで思いきり後ろを斬り払った。カキン、と金属音が響く。

「もういい、終わった」

加須原だった。
彼は神崎の刀を受け止めたまま、ぴくりとも動かない無表情でそう言った。
神崎は無言で刀を退くと、鞘を拾いに戻った。

加須原は、制服のポケットから出した刀用セーム布で、刀の血を脂ごと拭き取っていた。
洗えば繰り返し使える化学繊維布だが、本来は手入れの仕上げ用で、血を大量に吸わせるものではない。それをすれば自然、製品寿命は短くなり、紙を使い捨てた方が安くつく羽目になる。
会計の火嘉は嫌な顔をしたが、何も言わなかった。
鞘を拾って戻ってきた神崎は、この場は紙で拭うのみだ。最近は吸水、吸脂性のよい紙も多く、現場での手入れには十分なのだ。
加須原は鞘に刃を納めると、ふと独り言のようにこうつぶやいた。

「火嘉と組むと楽に済むな」
「だろ」

得意げな火嘉に、加須原が頷く。
神崎は肩をすくめた。
確かに、火嘉の奇襲から始まる作戦はひどく楽だ。必ず初撃で数人は仕留めてくれるし、注意が一瞬、火嘉の方を向く。必要になるのは、その一瞬を活かせる速度だけだ。
実際、先刻の加須原は、背後から無抵抗で突き殺したようなものだった。もっとも、振り向く間も与えないのは、さすがではある。

「楽すぎて腕がなまるんで、俺はあんまり組みたくないんですが」
「本人の前で言うか?そういうこと」

火嘉が顔をしかめる。

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